東京子ども図書館 子どもと本の幸せな出会いを伝え続け50年 「読書の本領は遊びにある」
4つの「家庭文庫」が結集
東京子ども図書館は、1950年代以降に盛んだった、個人が自宅を開放し、子どもたちに蔵書を貸し出したり、読み聞かせをしたりする「家庭文庫」が母体。児童文学の創作・翻訳・編集に携わった石井桃子さん主宰の「かつら文庫」や同じく児童文学者で米国で図書館学を学んだ松岡享子さんの「松の実文庫」、主婦の土屋滋子さんの「土屋児童文庫」などいずれも東京の異なる地域の4文庫が集まり、74年に私立図書館として誕生した。「主婦、作家・編集者、図書館員の3人それぞれの夢や動機が結集しました」と張替さんは話す。
都営大江戸線新江古田駅に近い閑静な住宅街に現れるれんが造りの建物は、1997年に募金を基に新館として建てられた。大人の利用者向けの資料室に約1万9000冊の児童図書や関連研究書、児童室には蔵書約9000冊があり、子どもたちが読んだり、借りたりできる。また、まきストーブのある部屋では「お話」を聞くことができる。お話とは、職員や同館で方法を学んだ大人が物語を自分のものにして語るもので、読み聞かせとは異なり本は見せない。聞くことで想像力が育まれるといい、同館は設立当初から語り手の養成にも力を入れている。「楽しく読書へ誘う手だてだと信じています」
「よく遊び、よく読んで」
開館から50年、同館で最も大切にしてきたことは「一緒に本を読んで楽しむこと」。設立者の一人、石井さんが読者の子どもに向けた「よく遊び、よく読んでくださいね」との手紙が残っている。張替さんは「読書の本領は遊びにあり、楽しさを通じて子どもたちの心を太らせる。勉強のように立身出世の手段でなく、人生を豊かにしていくものなのだと、子どもたちの様子を間近で見ながら、感じてきました」とほほ笑む。
だが、この半世紀で子どもたちの生活も変化してきた。受験勉強や習い事などで、忙しい日々を送り、本を読む時間が取れない。今夏は「ごろごろタイム」と題し、ほっとひと休みできるような企画を催した。「たくさん本を読むからいいわけではないんです。一冊でも自分にとって心のよりどころとなる本と出会ってもらえたらうれしい」
想像巡らす翼で羽ばたいて
設立当初、子どもたちは本やお話に笑い転げ、反応を体全体で表現していたが、近年は行儀よくお話を聞く子が多い。張替さんは「いつの時代も子どもは想像を巡らす翼を持ち、羽ばたきたいと思っている。(忙しい今の子どもは)その機会を奪われているだけでは」と話す。
直接本やお話を届けることを大切にしてきたが、来館が難しい人にも取り組みを知ってもらおうと、SNSを通じた広報活動も始めた。「当初目指した館の根幹は変わらず、メディアが変容していっても、本でなければ味わえないものがある。蓄積したものを手渡していきたいし、本という形あるものではない『お話』でも、子どもたちが楽しさを味わう機会を広げていきたい」と意気込む。
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