保育士から苦悩の声が続々「政策を決める人たちは現場で1週間でも実習したら?」 配置基準と処遇の改善を

(2023年5月19日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
写真

保育士9人が出勤せず、運営上のトラブルが表面化した保育園=東京都内で

「13人中9人が出勤せず」に反響

 人員不足などで園長への不満が爆発し、保育士13人中9人が出勤せずに一時休園した東京都内の保育園のニュースを先月、公開しました。記事のコメント欄には、同じような状況に苦悩する保育関係者からの投稿が相次いでいます。

「質のいい保育なんてできるわけない」

 「もうパートだらけで、つぎはぎだらけですよ。毎日違う保育士が入って保育するのに、質のいい保育なんてできるわけない」。40代の保育士は、けがをさせずに過ごさせるだけで精いっぱいで、自主性や自己肯定感を育てる保育とはほど遠い現状を訴えます。

 50代の園長は保育士の配置基準について「0歳3人に対し保育士1人、1歳なら保育士1人で6人。ほんとにこの数字で現場は回っていきますか? 家庭保育でこの人数を安全に豊かに保育することは可能ですか?」と憤りを込めて問いかけます。園長は、このギリギリの配置基準が、有資格でも保育の仕事に就かない潜在保育士を増やしていると指摘します。

 配置基準の改善は長年、保育政策の大きな課題です。しかし、政府が3月末に発表した「異次元の少子化対策」のたたき台に盛り込まれたのは、人手を増やすための運営費の加算だけで、基準自体の見直しは先送りされています。

0歳児保育は「戦場」 早く処遇改善を

 昨年度キャリアアップ研修を受けたという冒頭とは別の40代女性保育士は、「研修で『一人ひとりの安心と、安全を保障する保育』について学びました。多様化する保育ニーズの中、子どもとの向き合い方、関わり方など、こうするべき、こうあるべきと分かっていても、理想と現実はかけ離れています。毎日ギリギリの中、余裕を持って向き合い続けるのは難しいのが現実です」とつづり、0歳児保育の日常を「戦場」にたとえます。

 「0歳児は食事も着替えも全てにおいて介助が必要不可欠で、待てません。例えば食事なら、配膳前に検食、その間におむつ替え、エプロンや口拭き、雑巾の準備、子どもを1人ずつ椅子に座らせ、手を拭き、エプロンを付け。子どもが待てず泣いたりで催促されながら、給食室からワゴンを運び、1人ずつお盆に乗ったラップだらけの食器を外し提供。その前に食後のミルクつくり、寝床の準備があり、食後はミルク提供やおむつ替えや着替え、寝かしつけ。まとまって寝ない子どもが多く、また、5分おきのブレスチェックもあり、更に掃除、玩具拭きもあり、ものすごく戦場です」

 「保護者や子どもへの優遇策の前に、土台である保育園の配置人数や保育士の処遇の改善をただちにするべきだ」と訴えるこの保育士は、こう提案します。「政策のかじ取りをする人たちは、現場に1週間ほど実習に入ってみてはいかが。現在の配置人数がいかに大変か、どれだけ保育士が犠牲になっているかわかるはずです」 

122

なるほど!

2737

グッときた

55

もやもや...

156

もっと
知りたい

すくすくボイス

  • ran says:

    保育士配置基準について!
    1、2歳児を6対1は、考えてほしいと思います!
    1歳児は自己主張の強い時期、そしてとても大切な時期です!その時期に十分関わってあげたいと感じます!保育士が余裕をもって保育できるようせめて4対1にならないかと感じます!

    ran 女性 60代
  • わかってほしい says:

    保育士です。保育中(子どもと一緒にいる時間)に事務仕事や保育準備をする事は不可能だということを理解してほしいです。

    保育計画、記録、行事への準備、その他諸々はすべて残業や持ち帰りです。当たり前に賃金は発生せず、保育士の子どもへの気持ちだけが頼りです。家庭をプライベートを犠牲にして成り立っているのです。

    不適切保育への監視の目、主体性重視の保育、時代の変化で負担は増える一方です。時代や考え方が変わっていくのと同時に基準や処遇も変わっていくべきだと思います。

    わかってほしい 女性 40代
  • りん says:

    「政策のかじ取りをする人たちは、現場に1週間ほど実習に入ってみては」

    私の文面載せてくださってありがとうございます。数日前に気づきました。

    さて、本日は代休でしたが、終わらない仕事を持ち帰り半日以上費やしました。

    先日は丸1日仕事しており、「休みなのに何やってるんだろう」と、急にバカバカしくなりました。配置人数ギリギリなので、勤務時間が保育となり、その他のやる事を熟す事が不可能なのです。

    私の職場では働いた分の対価が支払われません。残業を申請しても難癖つけられ付かない物もある。また行事が迫って昼休憩もろくに取れなかったとしても、30分は取った事にしなくてはなないとの事で、偽装だよなまた安く使われているなと、本当に私達の犠牲の元に成り立っているなと嫌になりました。

    配置基準ギリギリで成り立っていないのに、成り立っている事になっているっておかしくないですか?また職場で仕事が完結できる環境に憧れます。

    りん
  • 保育士の声 says:

    なぜ保育士の声が国に届かないのでしょう?こんなにもいろんな新聞社さんが訴えを取り上げてくれているのに。

    県や市に任せて、お金がある県や市は保育士基準を改善して先に進み、お金のない田舎は保育士基準が変わりません。結局、お金があるかないかなんですね…。

    キャリアアップ研修を受けるたびに悲しくなります。理想と現実に。

    保育士の声 女性 40代
  • シオマネキ says:

    田舎の私立保育園保育士です。私の園でも、パートさんがいてギリギリ配置基準が満たされているのが現状です…

    2歳児クラスの複数担任のひとりを任されていて、9月までは21人の子供に対して4人の担任でどうにかやってきていました。しかし10月から1人が産休に入られ、21人に対して3人で無理矢理回しています。

    パートさんも入ってくれますが、妊娠された方がさらに増えて7人に対して1人なのが現状です。きついので園長にも聞いてみましたが、「文書上は産休にはいられた先生が居るから問題ない」という返事しか帰ってきませんでした。

    正直配置基準を満たしていても文書を書くなどの仕事は全て持って帰ってやっていたのでどう考えても人数は足りていません。

    政治家、家族経営に胡座をかく経営陣がどうにかならない限りどうにもならないなと他業種への転職も考えざるを得ない状態です。

    シオマネキ 女性 20代

この記事の感想をお聞かせください

0/1000文字まで

編集チームがチェックの上で公開します。内容によっては非公開としたり、一部を削除したり、明らかな誤字等を修正させていただくことがあります。
投稿内容は、東京すくすくや東京新聞など、中日新聞社の運営・発行する媒体で掲載させていただく場合があります。

あなたへのおすすめ

PageTopへ