夏休みに将棋の「自由研究」を! 高野六段のオンラインワークショップに親子で参加しました
古代インド、モンゴル、中国…各国に将棋がある
「この中で将棋知ってる人~?」。講師の高野秀行六段(48)の優しい声に、パソコンの前で緊張気味だった長女(7つ)の表情が和らぎ、勢いよく手が挙がりました。さすが、子どもに将棋を教えて20年以上という高野六段。画面に映るほかの子たちも、すぐ話に引き込まれたようです。
ワークショップは2017年から開始。通常は東京・千駄ケ谷の将棋会館に子どもたちが集まり、プロの対局を観戦したり、盤駒に触れたりしながら将棋について学びます。夏休みの宿題のうちでも難物の自由研究が、楽しみながら完成できる人気企画。今年はオンライン会議システムを用いた講義形式での実施となりました。
まずは「世界の将棋」の紹介から。古代インドの「チャトランガ」を起源とし、欧州へは「チェス」として伝来。東アジアに渡ると、モンゴルで「シャタル」、中国で「シャンチー」というゲームになりました。「モンゴルは動物を大事にする国だから、ラクダの駒があるよ」「中国は大きな河(かわ)が多いから、シャンチーの盤上にも河が流れているんだ」。高野六段は分かりやすく、各国の将棋の特徴を説明します。
804枚の駒使う「大局将棋」に大ウケ
次は日本の将棋の歴史について。鎌倉時代の書物に記録が残る「平安将棋」の盤面を見た長女は「飛車と角がない!」と驚いた様子。普通の将棋は計40枚の駒を使いますが、それより多い「中(ちゅう)将棋」(計92枚)、そして「大局(たいきょく)将棋」(計804枚)が出てくると、長女はツボにはまったようで、指をさして笑い転げています。
このように「100種くらいある」将棋の仲間のうち、将棋だけが持つ唯一の特徴があるそうです。それが「取った駒を使える」という点。「これで引き分けがほぼなくなり、決着がつく。誰が考えたか分からないけど、革命的なルールなんです」と高野六段。なるほど~、大人もためになります。
「負けました」は大事なあいさつ
5分の休憩の後は、プロの対局のお話。東京と大阪にある将棋会館の写真が映し出されました。「お父さん、取材でよく行くよ」と自慢すると、長女は「へえー」と興味を示した様子。対局の様子の写真を見て「これって羽生さん?」と盛り上がっています。
大事な「三つの礼」の解説もありました。対局開始の「お願いします」、投了時の「負けました」、駒を片付けて「ありがとうございました」。中でも「負けました」と言うことの重要さを高野六段は説きます。「ほかのスポーツやゲームでは、自分で言うことはあまりない。悔しいけど、とても大事なあいさつです」
藤井聡太棋聖をまさか…
最後は質疑応答の時間。何か聞くよう長女をせっついたところ、元気よく「先生、藤井聡太と勝負したことありますか?」。まさか時のタイトル保持者を呼び捨てとは…。父は冷や汗をかきましたが、高野六段は「2月に対戦しました。めちゃくちゃ強かったです」と答えてくれました。「藤井さんは詰め将棋が得意。みんなもちょっとずつでいいから、毎日挑戦してみて」との呼び掛けで、あっという間に1時間の講義が終わりました。
長女は「今年は自由研究やらなくていいんだけど」とぼやきながらも、教わった内容の穴埋め問題に答え、写真を貼って、何とか研究のまとめが完成。最近、別の習い事などで将棋から遠ざかっていましたが「またやりたい」と言ってくれたのは収穫でした。
高野秀行六段インタビュー 「真剣に怒り、真剣に褒める」
-オンラインでのワークショップの感想は
私が一方的にしゃべる形となるので、一体感を出せるか心配でしたが、チャットでの質問もあり、少しはキャッチボールができたのかなと思っています
-伝えたかったことは
将棋には独自の礼儀作法があり、先人たちがいろいろ考えて今の形になったということを感じてほしいと思っていました
-子どもに将棋を教える際、気を付けていることは
一つ心掛けているのは『その子がほかに習っていること、興味を持っていることに置き換える』というやり方です。また、前提として「真剣に怒り、真剣に褒める」。全力でぶつかることが、心を開いてくれる第一歩と思っています
夏休みオンラインこども将棋フェスティバル
夏休み恒例の将棋まつりや将棋大会が延期や中止となる中、日本将棋連盟が初めて企画。治療機器メーカーの「伊藤超短波」(埼玉県川口市)が特別協賛した。
6~16日、小中学生を対象にした将棋大会のほか、初級者向けの将棋講座、自由研究ワークショップ、棋士に自由に質問ができる動画配信など、多彩なオンラインイベントを実施。ほぼ全枠が満員となる盛況で、国内外から延べ300人以上が参加した。
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