俳優 佳久創さん 父・郭源治と比べられた子ども時代 自分で見つけた道に父は何も言わなかったけれど…

(2024年8月11日付 東京新聞朝刊)
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佳久創さん(由木直子撮影)

カット・家族のこと話そう

天才肌の父の指示が分からない 

 父は、台湾出身で元中日投手の郭源治です。母は日本人。姉と双子の兄、妹がいます。

 野球は、小3くらいから始めました。中学受験のために小5でやめて、中1からまた始めたのですが、そのころから父と比べられるのを窮屈に感じていました。先輩に「あいつ郭源治の息子らしいぞ」と言われ、ちょっと球が変なところに飛ぶと「え?」みたいな反応で、変に期待されているとわかり、やりづらかったです。

 父からも怒られたり、厳しい注文が飛んできたりする。ピッチャーをやってほしかったようで、投球フォームを見てもらうのですが、指示が分からないんですよ。父は天才肌なので、感覚で「あなたは、ここ、もっとこう」という具合に「こう」と「そう」しか言わない。部活に行かなくなり、しばらくして、顧問の先生から誘われたラグビー部に入りました。

 父からは何も言われなかったです。周りから見たら野球選手ですが、僕にとっては普通のお父さん。野球選手にならないと、とは感じていませんでした。お兄ちゃんは、長男だから野球をやらなきゃという思いがあったようで、社会人チームの「矢場とん」で続けていました。大人になって酒の席で、父に「2人とも野球やってくれたら面白かったのにね」と、そっと言われ、初めて父の思いを知りました。

きょうだいで過ごす時間が支え 

 ラグビーは、足の速さが生かせて本当に楽しかった。トヨタに入りましたが、けがに苦しみ、思うように活躍できませんでした。母に「しんどい」と電話し、休日に兄とスーパー銭湯に行く時間が心の支えでした。引退時は、母に「死にたい」と話すくらい落ち込みました。母は「人生には落ち込むときがあるけど、そこで自分の人生を判断してはいけない。ここでがんばれば、一気にぐっと上がる時がくるよ」と声を掛けてくれました。

 社業に1年専念しましたが、同期が試合で活躍する姿がうらやましかった。もっと心が燃えるようなことがしたい。ずっと演劇に興味があったのですが、役者の養成所に入る背中を押してくれたのも母でした。オーディションに合格して退社し、上京を決めたタイミングで、父に報告しました。ラグビーのときと一緒で、反対はされないと思っていたからです。そのとき父は、台湾で子どもに野球を教えていました。「あなたが決めたことなら応援します」と言ってくれました。

 きょうだいはみんな仲が良くて、すぐふざけ合います。子どものころから、アニメキャラの声をまねし合ったり、海外の通販番組ごっこで「おいジョニー、何しているんだい?」と言ったりすると、兄も妹も乗ってくる。今でも集まるだけで笑顔になれる、ありがたい存在です。

佳久創(かく・そう)

 1990年、名古屋市生まれ。ラグビートップリーグのトヨタ自動車ヴェルブリッツに2年在籍。2015年に引退し、2017年に俳優デビュー。「ノーサイド・ゲーム」や大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、スーパー戦隊シリーズ第47作「王様戦隊キングオージャー」、映画「キングダム 運命の炎」などに出演。10月公開予定の役所広司さん主演映画「八犬伝」に出演する。

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  • 匿名 says:

    佳久君の名前が知れ渡ったのは「王様戦隊キングオージャー」ですよね?
    プロフィールから削らないでください

     女性 60代
  • ゆず says:

    自分は出演作であるキングオージャーで佳久さんの存在を知り、インタビューやイベントなどからご家族のお話は聞いたりしていましたがここまで踏み込んだお話を伺えたのは初めてでした。

    お父様の思いやお母様の優しさ、ご兄弟との仲の良さと、これまで自分が知る限りの佳久さんの人柄といったものが点と線を結び、ああこんなに素敵な御家族に囲まれて育ったからこそ佳久さんはこんなにも優しい人なんだとストンと腑に落ちました。

    またキングオージャーの時のイベントでお母様に感謝の言葉を述べていたことが今になってより心に染み渡りました。

    佳久創という人間の一端を垣間見れたようでファンとしてとても嬉しかったです。素敵な記事をありがとうございました!

    ゆず 女性 30代

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