離婚したパパとママへ「ぼくはカウンセラーじゃないし、賞品でもない」 子どもの思い、絵本に
シンガポール政府が制作、日本での紹介に快諾
絵本のタイトルは「お父さんお母さんへ ぼくをいやな気もちにさせないでください 離婚した両親への手紙」。著者はシンガポールの家族法や少年法の専門家の女性だ。
物語は「お父さんお母さんへ 2人が別れたこと、わかっています」という小学生の男の子の告白で始まる。離婚した両親の家を行き来し、双方から相手の悪口を聞かされたり、味方に引き込まれたりして「ぼくは、カウンセラーじゃないし、味方でもないし、賞品でもないです」と訴える。
絵本は、シンガポールの社会家庭発展省が2017年に英語で制作し、家庭裁判所や離婚家庭への支援窓口などで配布している。同年、台湾で開かれた国際会議で絵本を知った野沢教授が「日本でも紹介したい」とシンガポール政府に翻訳の許可を求めたところ、快諾された。「ここまでシンプルに子どもの気持ちを表現した絵本はない。子どもに関わる多くの人に気軽に手に取ってもらえると思った」と振り返る。
子どもがいる夫婦、1年で12万3000組が離婚
シンガポールは欧米の多くの国と同じく、離婚後も両親が共同で子の監護に当たるのが標準になっているが、日本は先進国では例外的に、父母一方のみを子どもの親権者とする「単独親権制」のままだ。
厚生労働省の人口動態統計によると、2017年に離婚したのは約21万2000組で、うち未成年の子どもがいる夫婦は12万3000組余。一方、厚労省の全国ひとり親世帯等調査(16年度)では、離婚後に別居した親と子どもとの「面会交流」は、母子家庭が約30%、父子家庭でも約46%にとどまっている。
子どもの孤独感や疎外感を慰められるはず
野沢教授によると、単独親権制では子どもの親権を巡る争いが激化しやすい。シンガポールとは制度が違うものの、親の責任が問われる状況に変わりはない。
野沢教授は「絵本は、離婚に悩む子どもが読めば、孤独感や疎外感が慰められるはずだ。実親の存在やつながりは重要だ。日本の離婚・再婚制度を大人の都合ではなく、子どもの気持ちを大切にして見直す契機にしたい」と話している。
絵本はA5判、41ページ。「日本離婚・再婚家族と子ども研究学会」サイトの「学会発行物のご案内」にPDF形式で掲載されている。
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