被災した子どもたちへの適切な接し方とは 「見る、聴く、つなぐ」心の応急処置の考え方

加藤祥子 (2024年9月23日付 東京新聞朝刊)
  地震や風水害などの被災時の子どもの心のケアが注目されるようになってきたが、初期対応で欠かせないのが子どもへの適切な接し方だ。「準備・見る・聴く・つなぐ」を基本とした心の応急処置(PFA)に対する理解が国内外で広まっている。

PFAとは

 「Psychological First Aid」の頭文字をつなげた言葉で、日本語では心理的応急処置と訳される。2011年に世界保健機関(WHO)がマニュアルを作成。これを基に、子どもの支援に取り組む非政府組織(NGO)「セーブ・ザ・チルドレン」が13年、子どもの発達に特化した「子どものためのPFA」をつくった。

子どもの様子を注意深く観察

 2016年4月に起きた熊本地震。被災地には子どもたちの安心安全な居場所「こどもひろば」ができた。支援に駆けつけた公益社団法人「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」(東京)のスタッフが設置。PFAの行動原則を念頭に子どもたちと遊んだり、話をしたりし、時には注意深くひろばの周辺にも目を配った。

 同法人の精神保健・心理社会的支援エキスパートの赤坂美幸さん(48)は、今年8月に開かれたオンラインでの勉強会で、当時の状況を紹介。あるスタッフは、ひろばにいる子たちを外から見ていた子どもに気づき、声をかけた。祖母の世話や家の手伝いなどをしていることが分かり、学校の校長に相談。スクールカウンセラーにも伝えてもらった。赤坂さんは「支援者はできる範囲で支援をすることが大事。支援の範囲を超えると被災者を傷つける恐れがあり、専門家につなぐことが重要」と説明する。

能登半島地震の被災地にできた「こどもひろば」で、子どもらの話に耳を傾ける赤坂美幸さん(左)=石川県七尾市で(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン提供)

 PFAの行動原則のうち「見る」のポイントは「衣食住や医療など緊急の対応を必要としているか」や、「深刻なストレスを抱えていないか」など。赤坂さんは「支援が始まっているのに、同じ服をずっと着ている子や、お風呂に入った様子がない子など、専門家でなくても気付くヒントはある」と指摘する。

 一方、子どもとして被災時に起きる正常なストレス反応もある。保護者から離れることを恐れたり、震災ごっこなど遊びの中で災害を表現したりすることが、これに当たる。こうした行動を把握しておけば、深刻な事態との見極めに役立つほか、正常な反応が出ていれば通常通りの支援を続ける目安にもなる。

無理に聞き出さず寄り添って

 「聴く」では、発生したことを無理に聞き出すことはせず、寄り添って必要なことや心配ごとを確認する。初対面の大人の場合、自己紹介も大切だ。自然に耳を傾けられるよう未就学児や中学生、高校生など、相手の発達段階に応じて何パターンか練習しておくことを勧める。子どもが興奮してまくしたてるように話す場合には、落ち着けるよう相づちをワンテンポ遅らせる方法もある。

 「つなぐ」には、家族などと離ればなれにならないようにする支援や、問題への対処の手助けなどがある。「心の健康を回復するためには、災害前のように過ごせることが大切」とし、「何でも大人がやるのではなく、子どもが自分で対応できるようサポートして」と呼びかける。

 ただ、深刻なストレスを抱えている可能性がある場合は、速やかに医師や心理士など専門家につなぐ必要がある。その上で赤坂さんは、こういった心のケアのためには「(こどもひろばのような)安心して集まれる場が重要だ」と語る。

コメント

  • 災害時はとかく生命の安全確保、生活の維持のための衣食住に関心が向きます。それはとても大切なことなのですが、一方で子供たちや高齢者、障害のある方々など特別な配慮・対応な方々の存在への気づきと適切な対処が
    子ども大好きじいじ 男性 60代