学童保育に都が独自の認証制度を導入 運営の質の向上と「待機ゼロ」を両輪で でも自治体からは「ハードルが高い」

学童保育で漫画を読む子どもたち=1月、東京都文京区で(市川和宏撮影)
10カ所開設しても待機児童は減らず
「先に宿題やる!」「後で五目並べしよう」
平日の午後2時すぎ、文京区の学童保育に、近くの小学校からランドセルを背負った児童が続々とやってきた。本を読んだり、宿題をしたりして過ごす。
施設が改修中のため認可保育所内に「柳町育成室」と「柳町第二育成室」の2つの学童保育が間借りする。それぞれ約50人の児童が利用。発達面などで配慮が必要な子を見守る職員も含め、大人は各育成室に約10人と手厚い。
子育て世代の流入が続く文京区では、学童保育の待機児童も高止まりだ。2023年度は97人で、24年度に新たに10カ所の施設を造っても93人だった。本年度も4カ所を新設し待機児童は減る見込みだが、区児童青少年課の担当者は「なかなかゼロには…」と嘆く。
都内全体でも、学童保育の待機児童数は増加傾向で、昨年5月1日時点で3731人(前年度比207人増)に上る。昨年の都知事選で、小池百合子知事は「学童保育の待機児童ゼロと質の向上」を公約に掲げた。今年2月の都議会では、27年度末までの待機児童解消を表明。都は認証制度のほか、区市町村への新たな補助制度も設け、本年度約20億円を予算化した。
開所時間、職員体制… 国を上回る基準
学童保育の基準は、実施自治体が国の基準を参考にして独自に定められる。そのため、実際は国基準を下回る施設も少なくない。
都が始める「認証学童クラブ事業」では「平日は午後7時まで開所」「常勤職員を必ず配置」など国を上回る要件を求める。さらに早朝、午後7時以降も預かる施設などに補助金を加算する。27年度までは都の補助率を3分の2から6分の5に引き上げ、区市町村の負担を減らして普及を後押しする。都は本年度予算に約23億5000万円を盛り込んだ。
だが、「まずは待機児童解消が優先になる。都市部は場所や職員の確保も難しく、午後7時まで延長するのも簡単ではない」と文京区の担当者。こうした声に、都家庭支援課の担当者は「場所の制約など課題は認識している。人材確保や補助制度の活用など、区市町村に説明していきたい」と話す。
認証要件などを議論した有識者専門委員会の委員で、都学童保育連絡協議会副会長の高橋誠さんは「学童保育は自治体によって、需要や整備について考え方の違いが大きい」と指摘。都が今回、質を担保するための一定のラインを示した意義はあるといい「区市町村ごとの課題を把握し、制度を丁寧に説明し利用を促すことが重要だ」と話した。
学童保育
共働き家庭などの小学生を放課後や夏休みなどに預かる事業。正式名称は放課後児童クラブ。こども家庭庁によると、2024年5月1日現在、全国に区市町村による公営が6176カ所、社会福祉法人などの民営が1万9459カ所ある。職員配置などは国基準を参考にして自治体が決める。保育士や教員免許を持つ資格者らで研修を受けた「放課後児童支援員」の配置が求められている。
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