XTalent社長 上原達也さん 妻は出社で僕は在宅勤務 娘たちに「父は外で仕事、母は家事」という固定観念は、ない。

中沢佳子 (2026年3月8日付 東京新聞朝刊)

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働き盛り世代が家族との時間を大切にできる環境づくりについて話すXTalentの上原達也社長(松崎浩一撮影)

カット・家族のこと話そう

各界で活躍する著名人が家族との思い出深いエピーソードを語るコーナーです

仕事から帰ると妻も娘も寝ている

 新卒で入ったIT企業はハードワークで、早朝出勤、深夜帰宅が当たり前。24歳で結婚し、26歳で長女を授かりましたが、共働きで子育てする人が社内に少なく、僕もイメージできなかった。出版社勤めの妻が育休を取る流れになったのは、経済的に合理的だと考えたからです。でも、お互いが本当にそう望んで決めたのか、今も分かりません。

 帰ると妻も娘も寝ている。土日も働くことがありました。妻が娘を寝かしつける間に帰宅すると、流しに洗われていない食器が積んであり、ワンオペ育児の妻の苦労を感じました。でも、どうにもできない。早く帰るのは職場に後ろめたく、帰れば妻に罪悪感を抱く。キャリアとライフはトレードオフなのか。やるせなく、これは社会課題だと考えるようになりました。

 転職先の上司は子育て中の女性で、仕事と育児について語り合える環境でした。その頃生まれた次女の育児にも関わることができた。ほぼ関われなかった長女には「お父さんじゃだめ」なんて言われてしまうこともありましたが、次女は懐いてくれましたね。

 そんな経験が起業につながりました。在宅勤務など柔軟な働き方ができるよう、子育て中の働く「親」の転職を支援しています。父親の働き方も変えなくてはと考えました。現在、相談登録者の半数を男性が占める月もあります。仕事と家族との時間を両立したいという意識の表れでしょう。男性に育休取得を勧める社会になったとはいえ、復帰後は元の働き方に戻りがちです。育休を勧めるのはルールだからで、根本は変わっていないからです。「子どもができたら男はもっと働かないと」という意識は根強い。

「男らしく」より「自分らしく」

 起業の中身は妻に話しませんでした。気恥ずかしくて。妻は「好きにすれば」と言いましたが、なんだかんだ応援してくれました。今、妻は出社、僕は在宅で働いています。時短家電を駆使して料理もします。得意料理はパスタ。娘たちは「ママは仕事頑張っているよね。パパは料理が上手。おいしい」と言います。娘たちに、父親は外で仕事、母親は家事という固定観念は、ない。泣きながら宿題をする娘の相手をする嫌な場面もあります。でも、夫婦2人で臨むから、どうにか回る。家族を共同運営する感覚です。

 僕は公務員の父と専業主婦の母に育てられました。「男らしく」というような言葉をかけられたことはなく、「自分らしく」生きることができました。仕事で何かを成し遂げたい。家族の時間や夫婦それぞれのキャリアも大事。それは欲張りでしょうか。女性に限った問題ではありません。妻がキャリアを犠牲にするとき、夫はライフを犠牲にしている。裏返しです。家族か仕事かと何となく諦めていると、次の世代に引き継がれてしまう。「トレードオフにしない」を追求し、どちらも諦めない社会にしなくては。

上原達也(うえはら・たつや)

 1988年、愛媛県今治市出身。京都大学卒業後、ITサービス会社、タクシー配車アプリ提供会社を経て、2019年にワーキングペアレンツの転職支援サービスを手がける「XTalent(クロスタレント)」を創業。「フェアな労働市場をつくる」を掲げ、ジェンダーギャップ解消など社会課題に取り組んでいる。共働きの妻(38)と、長女(11)、次女(8)を育てている。

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