親子でふらりと「ゆめみる本屋さん」 絵本で癒やされた体験、共有しませんか

渡部穣 (2019年2月25日付 東京新聞朝刊)
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お勧めの絵本について説明する老川さん=熊谷市で

読み聞かせの時間が慰めだった…

 「ゆめみる本屋さん」という店名に引かれ、埼玉県熊谷市石原の絵本店に出掛けた。

 じゅうたん張りの床。部屋を取り囲むようにずらりと並ぶ絵本。子どもたちの身長に合わせ、本棚はどれも背が低い。部屋の中央には角の無いテーブル。奥にはベビーベッドもある。

 「子育て中の母親がふらりと立ち寄って、ホッとできる場所を目指しました」と店長の老川真弓さん(38)。「1時間とか2時間とか荷物を置いて、子どもと一緒にくつろげる場所になってもらえれば」と店内をレイアウト。赤ちゃんがはいはいしても安全なように、くつを脱いで店に上がってもらう。「孫にプレゼントしたい」と立ち寄る高齢者の客も多いという。本選びの相談にも乗る。

 自身も小学2年の女の子と6歳の男の子の母親。仕事と子育ての両立に悩み、2年半前の夏に長年勤めた鉄道会社を退社。4カ月後、「やってみなよ」という長女の励ましもあって念願だった絵本の店を開いた。

 仕事と子育ての両立の難しさに落ち込んだり悩んだりした時、子どもたちと触れ合える読み聞かせの時間が慰めだったと振り返る。「30分でもいい。貴重な時間でした。絵本に癒やされたり、励まされたり、勇気をもらったり。そんな体験を、同じ悩みを持っているお母さんたちと共有したかった」

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「ゆめみる本屋さん」のイベントで絵本について語り合う女性客たち。店内は絵本でいっぱい=熊谷市で

絵本は約500冊「選ぶ楽しさ知ってほしい」

 取り扱っている絵本は約500冊。図書館などで実際に手にして、子どもの反応が良かったものだけに絞っているが、「どんどん増えちゃって」と笑う。

 店が軌道に乗って昨夏から数カ月に1回、常連のお客さんらと絵本について語り合うイベントを開いている。「子どもが小さい時は、スーパーに出掛けるぐらいしか人と接する時間がなかった。同じ悩みを持っている人たちが楽しみを話せる場所を」と老川さん。良かった絵本を紹介し合う場として好評だ。

 悩みは店の継続。秩父鉄道石原駅から徒歩数分という立地だが、店舗は閑静な住宅街の中。偶然、店を見掛けて立ち寄る客の数は限られる。営業時間は午前9時~午後4時で、土日や祝日は休み。子どもの発病や学校行事などでの臨時休業もある。「お客さんのニーズに応えきれていないのでは」と悩むが、家族で一緒に過ごす時間は大切にしたい。

 「子どもたちに絵本を選ぶ楽しさを知ってほしい」。店を続ける意欲はそんな母心だ。

老川真弓(おいかわ・まゆみ)

東京都生まれ。電車で都内の学校に通っていた高校時代、乗り物酔いを紛らわすために眺めていた車掌の仕事に憧れ、大学卒業後に秩父鉄道に入社。しかし、子育てで仕事が制限されたことに悩み、2016年夏に退社。同年12月に絵本店「ゆめみる本屋さん」を開店。自身でストーリーを書いた絵本で賞も取っている。

◇「ゆめみる本屋さん」の公式サイトはこちらです。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年2月25日

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