なぜ日本は女性研究者が少ないのか 200人調査で見えた「家庭との両立の難しさ」と「無意識の偏見」

増井のぞみ (2022年4月23日付 東京新聞朝刊)

グラフ アンケート 当事者が考える「女性研究者が少ない理由」とは?

 日本の研究者に占める女性の割合は17.5%で経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最低レベルにある。東京新聞が理系の女性研究者203人にその理由を尋ねた結果、「家庭(家事・育児・介護)との両立が困難」が73%と最多だった。理系は特に不安定な任期付き雇用が多く、出産や育児で研究中断が余儀なくされる女性が、大きな不利益を受けている実情も浮かんだ。

周囲が「あまり勉強しなくていい」と…

 調査では、「育児・介護期間後の復帰が困難」が43%、「男女の社会的分業」40%の回答も多かった。

 自由記述では「任期中に出産に時間を充ててしまうと、次のポストが見つからない」「育休の条件に合わず取れなかった」と、家庭との両立の難しさを訴える声があった。2~3年などの任期付きは若手に多い。

 2番目に回答が多かったのは「無意識の偏見」で64%。子どもの頃の「女性は理科や数学が苦手」「あまり勉強しなくていい」という周りの態度が志望者を減らし、成人後は「家事・育児・介護は女性」という社会の雰囲気が研究を阻んでいるという指摘があった。

 アンケートは3月28日から電子メールで配布し、4月8日までに全国の大学や公的研究機関、企業などに所属する20~70代から回答を得た。

不安定な「任期付き」の立場 育休中の任期切れで復職できないケースも

 政府が実現を目指す「科学技術立国」の陰で、若手研究者の多くが「任期付き」という不安定な立場に置かれている。とりわけ女性は研究か家庭かの選択を迫られ、研究をあきらめざるを得ない人も多い。

 文部科学省によると、40歳未満の国立大学教員のうち任期付きは2009年度は49%だったが、2019年度は66%。自然科学系の大学研究者でみると、女性は73%と男性よりも9ポイント高く、人文・社会科学系の女性と比べても20ポイント超上回る(2021年の総務省調査)。

 背景には、特定の研究計画に期限を定めて投資する、国の「選択と集中」の方針がある。その計画の資金と期間に合わせて、研究員を集めるためだ。

 本紙アンケートでは、育児休業中に任期が切れて無職となれば、「保育園に子どもも預けられず、復職もできない」という回答もあった。子育て支援の仕組みが、特殊な雇用形態に対応しきれていない。

 一方、理系研究科が多い国立大学は任期なしで研究者を雇いにくくなった。人件費に充てられる「運営費交付金」を政府が縮小してきたためだ。2022年度予算で交付金は、大学を法人化した2004年度比で13%減った。名古屋大の丸山和昭准教授(高等教育論)は「一時的な人集めではなく、国は交付金を増やして若手の雇用安定化に充てる必要がある」と話した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年4月23日

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