おかん13人のチャレンジ キッチンカー「YES!OCAN」 子育てに追われる日々から一歩前へ 神奈川・逗子

砂上麻子 (2023年12月6日付 東京新聞朝刊)
 子育て中の母親13人が先月、神奈川県逗子市でキッチンカーの運営を始めた。車体の上で目を引くのが「YES!OCAN」のロゴ。オバマ元米大統領が国民を鼓舞したフレーズ「YES WE CAN」と、母親を指す「おかん」をかけたグループ名だ。家庭中心の生活から一歩踏み出し、前向きにチャレンジできる場所を目指す。
写真

代表の下崎真世さん(左)ら13人の母親が始めたキッチンカー=いずれも神奈川県逗子市で

カレー、魯肉飯、スイーツ…

 「今日はグリーンカレーをご用意してます」

 ある金曜日の正午前、逗子市役所前のキッチンカーに、昼食を買い求める人の列ができていた。カレーは辛さ控えめ。スパイシーにしたい時は「青唐辛子と枝豆のペースト」を足す。

写真

辛くないグリーンカレー

 こまやかな気遣いにあふれたキッチンカーを切り盛りするのは、同市や隣接する葉山町在住で未就学児から大学生までの子どもを育てる女性たちだ。日替わりで中華粥(がゆ)や台湾料理の魯肉飯(ルーローハン)、スイーツなど、それぞれの自慢の一品を提供している。

きっかけは…長男の不登校

 始めたきっかけはグループの代表を務める下崎真世さん(48)=逗子市=の小学4年の長男(10)が不登校になったこと。昨年6月から学校に行かず、自宅にこもって朝から晩まで10時間以上ゲームに没頭する毎日。少しでも気持ちを理解しようと、自身もコントローラーを握った。すると、ただ遊んでいるだけに見えて、実は自然とタイピングや漢字を学んでいることを知る。

写真

キッチンカー運営を発案した下崎さん

 考えを改めた。「自分の世界を持つ息子を変えることはできない。まずは母親が変わらなければ」

 地域の子育てサークルで出会った母親たちから、子育てに追われるばかりで自分が何をやりたいのか分からないという声を聞いていた。自分も同じだった。

日替わりだから助け合える

 「子どもから離れ、自分たちが挑戦できる場所をつくろう」。ママ友たちに声をかけ、特技を生かした占いやガラス細工、ゲーム大会などのイベントを企画。今年8月に市内のフリースクール「cas!ca(カシカ)」で、「おかん万博」の開催にこぎ着けた。

写真

担当するスタッフは日替わり。ある金曜日は主婦の石井朋子さん(左)が手作りの「辛くないグリーンカレー」を販売していた

 次に考えたのがキッチンカーだった。料理の得意な仲間は多い。市商工会が車両を貸し出していることも背中を押した。11月6日から営業を開始し、平日は市役所前、週末は各地のイベントで出店している。

 葉山町の関慎子さん(44)は手づくりのマフィンを販売する。日頃から、完全菜食のビーガンやグルテンフリーのお菓子を作っているが、小学6年の長男(11)が不登校で、外で働くのは難しい。日替わりのキッチンカーなら「みんなが互いに助け合うので、やりたいことに集中できる」と話す。

来春「おかん食堂」も計画

 キッチンカーを出すのは来年1月末までの予定。経験を基に、4月に逗子市内で「おかん食堂」をオープンする計画が進んでいる。下崎さんは「誰もが地域でチャレンジできる雰囲気をつくりたい」と話す。

 各週の出店予定は、インスタグラム「ocancrew」で案内している。問い合わせは、下崎さんがメール=shimomayo@gmail.com=で受け付けている。

※記事中の写真は、市川和宏・砂上麻子撮影

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年12月6日

0

なるほど!

2

グッときた

0

もやもや...

0

もっと
知りたい

すくすくボイス

この記事の感想をお聞かせください

/1000文字まで

編集チームがチェックの上で公開します。内容によっては非公開としたり、一部を削除したり、明らかな誤字等を修正させていただくことがあります。
投稿内容は、東京すくすくや東京新聞など、中日新聞社の運営・発行する媒体で掲載させていただく場合があります。

あなたへのおすすめ

PageTopへ