地方議会のオンライン出席認めて 育児や介護との両立したい…「議会は生きもの」と反対派も
感染症対策や災害時はオンライン可
議会のオンライン出席は新型コロナウイルス感染拡大が始まった2020年、総務省通知によって委員会開催に限って認められ、全国的に条例改正が相次いだ。しかし、感染症や大規模災害を想定しており、育児・介護や傷病で登庁できないケースは、考慮されていない。このため、横浜、川崎、相模原各市の条例では、オンライン出席を感染症と災害に限定している。
県議会は2つの条件に加え、「その他のやむを得ない事由」を盛り込んでおり、県議会局は「育児・介護も含まれる」と解説する。しかし、県議会のオンライン開催は、育児・介護に限らず実績がない。
立憲民主党会派の斉藤尊巳(たかみ)県議=川崎市高津区選出=は6月の常任委員会に出席したが、長男(6)の緊急入院に伴い、途中退席せざるを得なかった。斉藤県議は「採決日ではなかったので影響は少なかったが、オンライン出席できたら良かった」と話す。
別の女性県議は、病気の親族の診察に付き添うため委員会を欠席。その代わりにウェブで会議を傍聴した。この県議は「『その他』ではなく、育児や介護を条文に書き込むべきだ」と主張。今後、条例の改正に向けて有志の議員で働きかけを強めるという。
若手議員のためにも条例の見直しへ
川崎市議会では7月、女性議員ネットワーク会議(会長・山田瑛理自民党市議)が、育児や介護などオンライン出席の条件を拡大するよう議長に要望した。同会議事務局長の木庭(こば)理香子市議=麻生区・みらい=は、要望実現の背景に「昨年の市議選で若い議員が増えた」ことを挙げる。「市民から選ばれた代弁者として、発言する役割と責任がある」と、けがや病気もオンライン出席の要件に加えるべきだとする。
横浜市議会の国民民主党系会派に所属する深作祐衣市議=都筑区=は長女(3)の子育て中で、10月末には第2子の出産を控える。市議会には、出産6週前から産休を取れる規定がある。「使えない制度を作っても仕方ない」と、当初は産前から休暇を取り「ロールモデル」となるつもりだった。しかし、「市民から負託を受けた議員に、代わりはいないから」と、出産まで休まないことを選択した。
同会派の小粥康弘団長は、深作議員の出産が迫っていることから「できるだけ早く(オンラインに関する)規定を整備すべきだ」と語る。鈴木太郎議長(自民党)は、オンライン出席の要件緩和を含む議会基本条例の見直しを加速するよう指示したという。
規定を使わなくても柔軟な選択肢を
育児や介護によるオンライン出席には、慎重な意見もある。県内の野党系地方議員は「議会は『生きもの』だ。議論が紛糾して休憩がたびたび入ることもあるし、立ち話で突然調整が始まることもある」と、直接顔を見せ合った上での議論が必須だと力説する。「子どもの世話や親族の介護で外に出られないなら、そちらに集中すべきでは」と主張する議員もいる。
深作市議は「規定がないことと、規定があるが使わない選択をするのでは全く異なる」と反論。「議会に出席するのが基本なのは当たり前。(オンライン出席という)選択肢があることが大切だ」と話した。
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