「小1プロブレム」どう支える? 不安を和らげる取り組みや家庭でもできることを聞きました 

石川由佳理、加藤祥子 (2025年3月19日付 中日新聞朝刊)
 「小1の息子が入学後に環境の変化についていけず、教室にいられなかったり、周囲の子に手を出したり。小児科の発達相談は半年待ちで、可能な日は保護者が授業に付き添っているが、どうすれば落ち着いて学校生活を送れるようになるのでしょうか」というお悩みが岐阜市の読者(38)から寄せられました。学校生活に適応できない「小1プロブレム」に対する、不安を和らげるための取り組みや専門家の声のほか、読者の意見を紹介します。
写真 園児と1年生のじゃんけん列車

小学校生活の不安を和らげるための交流会。園児と1年生がじゃんけん列車を楽しんだ=名古屋市南区の笠東小学校で(一部画像処理)

小学校に上がった途端、ずっと座って授業を受けることを求められて

【お悩み】小1の息子が環境の変化についていけず、教室にいられなかったり、周囲に手を出したりします。保育園の時はそれほど問題はありませんでした。支援員の先生がついてくれますが、他にも見守る必要がある子がいて人手不足のようです。「小児科で発達の相談を」と勧められて予約しましたが、半年待ちです。

周囲にも息子のように手が出る子もいれば、泣いている子、家でかんしゃくがひどい子など、さまざまな子がいます。小1になった途端、ずっと座って授業を受けることや、教員の細かな指示に従って行動することが求められます。子どもに負担のない環境づくりを重視するなど、学校の意識が変わることを願います。

現在は、保護者が可能な日は授業に付き添っていますが、仕事を早退しなければならないことも、ままあります。どうすれば子どもが落ち着いて学校生活を送れるでしょうか。

入学前に小学校で過ごして安心感を

 学校生活への不安を和らげるため、入学を控えた子どもたちが小学校を訪れる取り組みがある。1月下旬には、名古屋市南区の認定こども園「笠寺幼児園」の年長の子どもたちが、近くの笠東小学校で1年生と交流した。

 「国語はひらがな、カタカナ、漢字を覚えます。僕は漢字が好きです」。交流会では、1年生が学校生活や授業、行事を紹介。その後、一緒にじゃんけん列車をしたり、折り紙のこまや松ぼっくりのけん玉で遊んだりした。園児の1人は「けん玉が楽しかった。学校に行くのは、めっちゃ楽しみ」と目を輝かせた。

 同園では10年以上前から、近くの小学校への訪問を続けている。横井雅哉(まさちか)園長は「学校がどんなところか分からない子も多い。実際に行くことで安心できる」と話す。

 小学校側も円滑に学校になじめるよう工夫している。笠東小では、市の方針にあわせ、入学後も保育園や幼稚園での遊びに近い活動を取り入れる。学校探検で文字や数字を見つけたり、教職員や友達と話す場面をつくったりし、国語や算数といった教科での学びにつなげている。

 今回、幼児と遊んだこまやけん玉も、生活科の授業で1年生が手作りした。教務主任の石川智美さんは「自分たちが作ったものを園児が楽しむ姿を見ることで、学習の意欲が湧いてくる」と話した。

子どもが会話を楽しいと思えるように

 小学校教諭として長年勤め、幼稚園・保育園と小学校の連携に詳しい白梅学園大(東京都小平市)の増田修治教授は「小1プロブレムは1998年ごろから顕在化してきたが、最近は授業中の立ち歩きなどで『小1崩壊』というような状況になってきている」と語る。コロナ禍で人との接触が制限され、集団的な学びが必要な時期に孤立化してしまい、流れが加速したと分析する。

写真

増田修治教授

 文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、全国の小学校で暴力行為をした小1の数は、2011年度が266人だったのに対し、23年度では7319人と30倍近くに増えている。

 増田教授によると、小1プロブレムを予防するために重要なのは、子どもの話を聞くこと。「今日、保育園どうだったの」と聞くよりは、先生や他の保護者らから得た情報を基に「こんなことがあったみたいだけど、そのときどう思ったの」などと質問することで、子どもが会話を楽しいと感じ、人の話も聞けるようになるという。

 また、授業中にいすに座り続けるには、先生が話している内容といった必要な情報と、運動場からの声や窓から入る風などの不必要な情報を取捨選択する「感覚統合」が必要だという。ボールを上に放り投げ、一度手をたたいてから、ボールを受け止めるといった運動をすることで、感覚を調整していくことができる。増田教授は「体の使い方を学ぶことで、いすに座れるようになっていく」と話す。

読者の声 療育やカウンセリングも視野に

 名古屋市の小学校に勤める女性教員(41)は「その子にとってどの居場所が居心地がいいかを見極めるのが大切」と指摘。「特別支援学級に転籍し、手厚い個別支援で落ち着いた子をたくさん見てきた。教科によっては通常級で学習することもできるので、支援級の見学を学校に求めてみては」と提案する。

 愛知県江南市の女性(44)も、次男が小2の時に馬が合わない子に手を出してしまい、女性自身が可能な限り図書室で待機していた経験がある。親子で児童精神科医のカウンセリングを受け、怒りをコントロールするアンガーマネジメントなどを学ぶうちに、だんだんと落ち着いたという。「先生や支援員らに相談し、子どもにとっていい環境を整えてあげて」

 同様に環境の変化が苦手な小1の子どもがいる愛知県の女性(37)は、本人が定期的に堂々と教室内を歩く機会をつくるために「担任の先生と相談して、プリントの配布といった特別な役割を与えてもらっては」と助言する。「先生やクラスメートから感謝されればやる気も高まり、集団への帰属意識の芽生えにもつながるのではないか」と勧める。

 息子が小1の時、立ち歩きや友達とのトラブルが日常茶飯事だったという岐阜県多治見市の女性(47)は「3歳から小4まで療育に通い、中3の現在はすっかり落ち着いて昔の悩みからはすっかり解放された」と、自身の経験を振り返る。

元記事:中日新聞 CHUNICHI Web 2025年3月19日

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