「ガラスの天井」とは? 女性初の首相となった高市氏 総裁就任を報じる際には「ガラスの崖」の表現も

イラスト・東茉里奈
先は見えるのに、なぜか進めない
「ガラスの天井」は、能力や実績が十分でも、女性やマイノリティーであるために昇進を阻まれる状態を指します。透明なので障壁の存在が分かりにくく、先は見えるのになぜか進めない。1978年、米国の女性コンサルタントが初めて用いたとされます。
2016年の米大統領選でトランプ氏に敗れた女性候補者ヒラリー・クリントン氏が、敗北演説で「大統領という最も高く硬いガラスの天井は破れませんでした。しかし、いつか必ず誰かが破るでしょう」と述べたことが大きく報道され、日本でも広く知られるようになりました。村井さんは「文字で目にすることはあったが、この言葉を肉声で聞いたのはこれが初めてだった」と振り返ります。
失敗のリスクが高い場面で抜てき
今年10月、高市氏が自民党総裁に就任した際には、「ガラスの崖」という表現も使われました。平時や業績好調時ではなく、失敗のリスクが高い局面で女性がリーダーに抜てきされる傾向があることを指します。
村井さんは「『崖っぷち』の状況では、失敗しても切り捨てやすいと見なされている女性やマイノリティーが救世主のように担ぎ出されるケースが見られる」と解説します。「危機的状況でトップに立ったとしても、その地位は足場が不安定。いつ崩落するか分からない崖の上に立たされているイメージです」
高市総裁の誕生には「自民党内で少数与党の窮状を打破したいという意図が働いたとも考えられます」と指摘します。

ジェンダー問題に詳しい社会保険労務士の村井真子さん(本人提供)
「ガラスの壁」「壊れたはしご」も
女性のキャリアに関する用語は他にもあります。「ガラスの天井」が垂直方向(=昇進)の障壁を指すのに対し、「ガラスの壁」はキャリアの水平方向の障壁。営業や企画など主力とされる部署から外されがちであるなど、女性の職務が限定される傾向を表します。
また、「ガラスの天井」にたどり着くまでにも困難があることを表す「壊れたはしご」という表現もあります。女性が昇進のために上る階段は最初から壊れている、つまりキャリアの初期段階で既に男女格差がある状況を表します。
村井さんは、女性首相の誕生は「ガラスの天井を破ったこと、そしてはしごが存在していたことの証明でもあるので、その点はうれしく思う」としながらも、「高市氏に難局のかじ取りを任せておきながら、都合が悪くなると切るような態度を取る政治家がいないかどうかを、一有権者として注視していきたい」と話しています。
そして、全体として見ると、国会議員に占める女性の割合は20.5%(2025年10月29日現在)にすぎません。地方議会はさらに低く、都道府県議会議員では14.6%、市区町村議会議員では18.1%です(ともに2024年12月31日現在)。「日本の政財界はまだ女性の進出がなされているとはいえない。まずは『なぜこのような状況なのか』を女性も考えるべき時期なのではないか」と村井さんは指摘します。
村井真子(むらい・まさこ)さん
社会保険労務士、キャリアコンサルタントとして、ジェンダー問題にも取り組む。2014年に独立し、村井社会保険労務士事務所を開業。愛知県豊橋市を拠点に活躍する。著書に「職場問題ハラスメントのトリセツ」「職場問題グレーゾーンのトリセツ」(アルク)、原作に「御社のモメゴト それ社員に訴えられますよ」(KADOKAWA)。
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実際に高市氏は女性初の総理なのは事実です。それを「ガラスの崖」と揶揄するのは不快ですし、既に「女の敵は女」がSNS上に溢れています。素直に、高市総理誕生を祝いましょうよ?