妻は「飢え死にしそう」だったなんて… 僕はギターを弾いていた 私たちの産後クライシス〈第1章ー夫〉
〈こんなはずじゃ…私たちの産後クライシス〉第1章 夫の語り
6歳の1人娘を育てる40代の夫婦が直面している「産後クライシス」。その現実に、それぞれの「一人語り」で迫ります。
◆第1章で語られることは…
緊急帝王切開で心身ともに極限状態にあった妻は、「食べるものがない」と訴えても夫に昼食を買ってきてもらえず、絶望感を抱く。
一方、夫は妻が幸せそうに見えたと誤解し、産後の苦しみを全く理解できず能天気に振る舞っていた…
今回は、夫の語りです。

「妻は幸せそうに見えた」と振り返る男性
「裏切られた」妻からの突然の告白
長女が2〜3歳くらいになった数年前、妻から突然言われました。
「産後は何も手伝ってくれなかった。本当は言いたかったけれど、今まで子どもの世話が忙しくて言えなかった」と。
子どもが寝た後、歯を磨いている時だったと思います。
何を言われているのかピンと来なくて、その時はなんでそんなことを言うんだろうと思い、「そんなことないよ、俺もやっていたよ」みたいなことを言い返したと思います。
産後に僕から言われた言葉が、PTSDみたいにトラウマ(心的外傷)になっているんじゃないかと言うんです。その時のことがフラッシュバックすることがあるみたいで。「産後は、ことごとく裏切られた」と言われました。
当時を思い出すと、妻はとても幸せそうにしていたイメージで、強く非難された記憶もありません。
自分は全く家事育児をしない夫ではなかったとも思うんです。
ピンとこない記憶
実際、どんな言葉をかけたのか覚えていないのですが、あの日から妻に繰り返し言われる話があります。
子どもが生まれて1週間で妻と子どもが退院したころ。妻は「食べるものがないから買ってきてくれない?」と僕に言ったのですが、僕は買わずに仕事から帰ってきたみたいです。
「おなかも痛めているから動けないの」とも説明したそうですが、そういったやりとりは思い出せないんです。
僕が「何を買ってきたらいいの」と聞いて、次の日のお昼に食べるものとして、「おにぎり何個か」と言われて買ってきたみたいですが。そういう一連のやりとりが「ショックで悲しかった」と言われました。
僕は、お昼に食べるものなら子どもを連れて自分の食べたいものを買った方がいいと思っていたのかもしれないです。
だって、自分で歩けているし、コンビニも家の目の前にあるんです。妻は「お昼ご飯がなくて飢え死にしそうだった」と言うのですが、当時はそんなふうには見えませんでした。

長女の前では夫婦仲良くを心がけているという
僕は「神に感謝」していた
退院してから幸せな子どもとの生活が始まって、妻はにこにこと子どもに笑いかけていました。
僕もやれることはやろうと思い、買い物もしたし、夜にあやすの代わってと言われたらやりました。
なんかもう神聖な気持ちで、妻に感謝、神に感謝。自分の子どもが生まれてうれしくて仕方がなかった。
たぶん女性はもっと現実的に「子どもを世話しなきゃ」って感じだと思うんですけど、全然違う気持ちでいましたね。
僕はギターが好きで、やたら弾きたい気持ちになるんですよ。
音が出にくいピックを買って、子どもの前で鳴らすと反応するし「大きくなったら練習するか」なんて話しかけていたり。
今考えるとそれくらい能天気で、いろんなことを子どもにやってあげたいと思う一方で、どうしていいか分からずオロオロしていたと思います。
知識があれば…未来は変わったのか
ただ、妻から「助けてくれなかった」と強く言われ続けるうちに、そのころの状況を頭では理解できるようになってきました。
産後の女性の体がどれほどきつくてつらい状態にあるのかを、事前にどこかで学べていたら、今の状況は避けられたのではないかと思っています。
交通事故で寝たきりとか、骨折というわけではないので、「痛い」と言いながらも普通に動けていて笑顔もある時間が流れていて、「つらい日々もいい思い出になるよね」くらいの軽さでいたんだと思います。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい











