海外転勤に同行しての子育てでうつ状態にならないために 自分の居場所、本音で話せる人を確保して

加藤祥子 (2026年3月28日付 東京新聞朝刊)
 新年度、夫や妻の海外転勤に同行し現地で子育てをする人もいる。慣れない生活にストレスを抱えるケースもある。心の健康を保つため、どのような心構えが必要か。経験者でもある金城学院大(名古屋市)専任講師の前川由未子さん(36)=心理学=は「子どもにとっては親がすべて。まず、親が安定していることが一番」と呼びかける。
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前川由未子さん

日課を決め、打ち込めることを

 「海外では相談できる相手がいなくて、夫にストレスをぶつけてしまった」。夫(40)の転勤に伴い、2015年から8年間、シンガポールとタイで暮らした東京都の女性(37)は振り返る。

 2019年に日本で長男を出産後、タイで初めての子育てに直面した。新型コロナウイルスの流行で外出できず、ママ友もいない。「子どもが小さなごみを口に入れる」「夜泣きがしんどい」。慣れない仕事を抱えた夫は悩みに向き合ってくれなかった。

 前川さんによると、環境が変わりかんしゃくを起こし、寂しさを抱える子どももいるが、親に余裕がないと受け止め切れない。特に渡航後1~3カ月は、言語や習慣の壁にぶつかる。天候や治安で外出しにくかったり、日本食の入手が難しかったり。これらの疲労やストレスで、無気力になる人もいる。

本音で話せる人を1人は確保して

 重い状態にならないよう、前川さんは日課を決め、習い事など打ち込めることを取り入れるよう勧める。前川さんもタイで子育ての大変さからうつ状態になったが、現地の日本人の悩み相談を受けるボランティアをして救われた。臨床心理士・公認心理師の経験を生かせたことは大きく「自分の居場所を見つけることも大切」と話す。

 さらに「本音で話せる人を1人は確保して」と助言。専門家でなくても、日本の両親や現地で活動する日本人でもいい。

 送り出す側も状況を理解するよう心掛け、「困ったことはない?」などと問いかけるといい。前川さんは「相談して心に余裕ができると合理的に考えられ、自分で解決に向かえるかも」と説く。

外務省が相談窓口をリストで紹介

 外務省も海外で孤立したり、孤独を感じたりする邦人向けの対策に力を入れる。チャットや交流サイト(SNS)を利用した相談窓口を同省のホームページで紹介。担当者は「海外では言葉の壁があったり、精神科の受診が高額だったりし、相談先が少ない」と話す。

 同省から相談業務を委託されたNPO法人「あなたのいばしょ」(東京)の2024年度報告書によると、相談した在外邦人の世代別割合は、国内からの相談と比べ、30代女性で5ポイント、40代女性で3ポイント高かった。配偶者の海外転勤に伴う転居などが要因として挙がった。職業別では主婦・主夫の割合が6.2ポイント高く、配偶者との関係や育児などに関する相談が寄せられた。

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