〈坂本美雨さんの子育て日記〉59・入学前夜に思う ここまで育ってくれてありがとう

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ランドセルを背負って

坂本美雨さんの子育て日記

娘に戦争を説明する、苦しい春

 戦争と卒園と入学。なんという春だろうか。民間人も犠牲になる、これほどまでに残虐な戦争になるとは想像を超えていて、悲しみと恐ろしさに押しつぶされる日もあった。うちの近所がキーウのようになったなら…と、怖いことほど克明に想像してしまう。

 今日の私たちと同じように、ただ普通の日常を送っていた人たち。仕事終わりに今日のごはんは何にしようと買い出しに行くお母さん、私たち親子と同じようにBTSのライブを心待ちにしていた人たち。なんの脅威にもなりえない子どもたちもが殺されるなんて、本当に、本当に、狂っている。ニュースを見るのもつらいが、でも知らなくてはと突き動かされる。

 今回はSNSを駆使した情報戦によってスピーディーに露見し広まっているだけで、どの戦争でも起きていたことなのだろうと思うと、自分の無知や無関心が恥ずかしくもある。娘にこんな戦争の説明をしなくてはならないなんて、とても苦しい春となった。

私にとっても、幼児期の終わり

 そんななか、娘の毎日は卒園、入学を経て大きく変化した。ランドセルにも慣れ、隣の席の子と早々に友達になれたらしい。私は、卒園式も入学式も予想に反して泣かなかった。コロナの影響で保育園の最後の日々もなかなか園児がそろわず、しっかりとお別れができないまま…。入学の準備と自分の仕事の節目も重なり、毎日が慌ただしくて気持ちの整理がつかないままフェーズが移行していく。大イベントのように待ち構えた入学だったけれど、こんなに地続きなものだったのだなぁ。

 唯一すこし立ち止まってジーンときたのは、入学前夜。娘と水いらず、とてもいい夜だった。もともと温泉でも行こうかと思っていたのだけど、それまでドタバタだったので遠出はやめて、近場でゆっくりとすごした。

 まず、この連載にもよく登場してきた友人のカフェ、ハミングバードコーヒーでお茶をし、チーズケーキを食べて、中目黒の銭湯でひとっ風呂。さっぱりしてから、川沿いの大衆的なおすし屋さんで好きなものを並べて小さく乾杯した。娘とカウンターでギンナンとお刺し身をつまみながら未就学児最後の日を祝う、こんなことができるようになるまで、よく育ってくれました。いつも優しくしてくれてありがとう。本当に、おめでとう。彼女にとっても私にとっても、幼児期の終わり。これからも、よろしくね。満開の八重桜の下、手をつないで帰った。(ミュージシャン)

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