「40年通い続けている私でも…」絵本作家・田島征彦さんと沖縄 自分のこととして考えるには
長壁綾子 (2022年6月17日付 東京新聞朝刊)
絵本「なきむしせいとく 沖縄戦にまきこまれた少年の物語」(童心社)=写真=を刊行した絵本作家の田島征彦さん(82)に、作品や沖縄について話を聞き、記事にしました。長年沖縄を見つめ、題材にしてきた田島さんが真っ正面から沖縄戦を描いた作品です。
沖縄戦の手記や資料は今まで多く読み込んできた田島さんですが、自身は沖縄戦を経験していません。どうリアリティーを出せばいいか悩んだ末、「自分が8歳の少年だとして、沖縄戦に巻き込まれたら」という視点で描いていきました。
完成直前に、田島さんは絵本のゲラを沖縄に持って行きました。この絵本が世に出ることで、沖縄の人たちを傷つけないか、不満に思われないか確認をするためです。多くの人が好意的に受け止めてくれた一方で、ある指摘を受けました。それは、最後の基地闘争の場面についてでした。
米軍基地の前で「こんなものは、なくしてしまうさぁ」と主人公のせいとくたちが叫ぶせりふは、当初「こんなものは、ぼくたちの手でなくしてしまうさぁ」と書かれていました。「ぼくたち」という表現では、「沖縄の人たちだけ」と取られてしまう。日本全体の問題として表現してほしい、という要望でした。
「40年通い続けている私でも、沖縄のことを自分のことと思えていない部分があるのだと痛感した」と田島さんは振り返ります。
本土復帰から50年がたち、23日には慰霊の日を迎える沖縄ですが、いまだ主人公たちが望む姿ではありません。この作品が、沖縄の問題を自分のこととして考えるきっかけとなればと願います。
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田島征彦さんのじごくのそうべえでは笑ったり、ハラハラしたりと楽しませて頂きました。そうべえの暮らしを面白がって読みました。
このなきむしせいとくでも力強いタッチやくっきりした色使いに征彦さんの沖縄への強い思いも感じました。こんなことが二度とないようにするのが私たち大人の義務です。記事の最後に『私たちにできることは』とありましたが、政治から目を離さないようにしていくことも大切だと思っています。
絵本「なきむしせいとく」を是非購入して孫たちに読み聞かせたいと思います。
わが家をあと3年後に「まちかどライブラリー」にするのが当面の夢で、少しずつ良い本や絵本を集めています。
この年齢になるとすぐ目の前のことに行きがちですが、次世代の子どもたちを育てていけば、私の気持ちが伝わって引き継いで貰えると思っています。いつも心に響く東京新聞に励まされています。