子どもが急に発熱、仕事は休めない…そんな共働き世帯の救世主 病児保育を自宅に届ける「緊急サポートセンター埼玉」
緊急電話を受け「サポーター」を手配
「明日にも来てほしい」と利用者からの緊急電話を受け、近くのサポーターを手配し、利用者宅などで病児の一時預かりをする。埼玉県内25市12町で展開。サポーターは資格を問わず、研修を受けた主に子育て経験のある50代以上のパート女性が活躍する。オムツ替えなどの世話をしたり、折り紙で遊んだり。利用者にとっては、困った時に近所の世話好きおばちゃんが駆けつけてくれる感覚だ。
病児保育を巡っては、公設で病院や保育所併設型の「病児保育室」もあるが、定員が2~3人と少なく、希望する日に預けられないことが少なくない。設置基準が厳しく、赤字運営のところもあるとして、賀川さんは「医師が良心でやっているようなもの。少子化で次々と増やすのは難しい。預けられないところを僕らが埋めていく」と緊急サポートの意義を語る。
「妻が休めばいい」偉そうにしていたが
賀川さんはリクルートホールディングス(東京都千代田区)で求人雑誌のマーケティングや販売に携わった。読者との交流で、働きながら子育てする母親の苦労を耳にする一方、企業側が子育て世代の採用を渋る現状を思い知った。
自身も1999年に長男が産まれ、子育てが始まった。息子は病気がちだが病児保育室が近くになく、妻が仕事を休む日々が続いた。「当時は(妻が休む方がいいと)偉そうな態度だった」と苦笑いする。
2万世帯が登録 このノウハウを全国に
同社は当時、フレックス定年制度があり早期退職が主流だったという。自身も退職を考えており、「妻も困ったし、風邪の子を預かる事業を」と迷わず辞めた。NPO法人の立ち上げを学ぶ塾で出会った仲間と2005年秋、NPO法人「病児保育を作る会」を立ち上げた。
現在、約2万世帯が利用登録する。コロナ禍で母親同士の口コミが減っているとして、「サポートがあること自体を知らない人もいるはず」。少子高齢化の今、緊急サポートの仕組みは高齢者の地域での活躍の場にもなり、彼ら自身をケアする事業にも応用できる。「これからますます必要とされる。自分たちで立ち上げたノウハウを全国に広げたい」
賀川祐二(かがわ・ゆうじ)
1966年生まれ、札幌市出身。NPO法人「病児保育を作る会」代表。埼玉と都内、群馬の一部で緊急サポートなどの事業を受託する。料金は自治体ごとに1時間300~1000円(税込み)。サポーターは約1500人。全国に広げる活動への寄付を募っている。問い合わせは病児保育を作る会=電話047(401)0804で受けている。
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