「母親になって後悔してる」に広がる共感 タブーに切り込んだNHK「クロ現」制作側の思いは?
子どもへの愛と「つらさ」は両立する
―書籍は「過去に戻れるとしたら母親にはならない」とするイスラエル人女性23人への調査をまとめたものです。この本に着目し、番組を作ろうとしたきっかけは。
依田真由美・社会番組部ディレクター 個人的なことですが、中学生のころから、自分の母親やまわりの母親を見ていて「育児や家事をやるのがお母さん」であり、母親=犠牲になるもの、ではないかと感じていました。
母親は専業主婦でパートをしていましたが、どこかつらそうに見えて、子どもを産まなければ自分の好きな仕事ができたのではないか、もっと輝ける人生があったのではないか、と思いました。私はもっとキャリアを積んでいきたい、諦めたくないと思って、NHKにも入局し、自分がやりたい仕事をしてきました。「母親ではない人生を歩む」と。
一方で、現在34歳ですが、どうしても年齢的なことを考えます。言語化ができていなかったのですが、「母親という役割」にはおびえがありました。でも、夫の理解もありそうだし、恐れていたような「母親になることで犠牲になる」ことをしなくてもいいのではないか、と思うようになりました。「子どもと会いたい」と「母親になりたくない」という気持ちが両立する複雑な感情がありました。
そういうモヤモヤの中でこの書籍「母親になって後悔してる」に出会いました。書籍の中で「子どもを愛する気持ち」と「母親という役割に対してのつらさ」は両立する、とあり、モヤモヤを言語化してくれていると興味を持ちました。来年2月に出産予定です。
誤解を生みそうな「後悔」の深い意味
―書籍の内容に共感した日本の女性へのインタビューなどをまとめた記事には300通ほど反響があったそうですね。日本でも同じように感じている女性は少なくないのですね。
中島紀行・取材センター社会部副部長 大変熱くて、長く、中身の濃い反響でした。(悩んでいても)「母親なんでしょ?」という言葉で片付けられてしまうとか、「母親はすべて子どもにささげて当たり前」という言葉を呪文のように感じる、自分が透明になっていくように感じる、などもありました。
依田 私たちがこれまで聞き逃してきた言葉だったな、と思いました。今回、本当は取材を受けたくないけれど、次の世代に残してはいけない問題だと思うから話す、という方もいらっしゃいました。
―「母親の後悔」との言葉に傷つく人もいるかもしれません。
中島 誤解を生みそうな、深い意味を持った言葉です。子どもや、子どもを持ちたくても持てない人を傷つけないために、広く一般化して、多くの立場の方に共感してもらえるにはどうしたらいいか、それが番組の鍵になると思っています。
現在の、母親になったらこう、キャリアウーマンならこう、父親はこう、という一直線の画一的な像から解き放ちたい。さまざまな母親の形、あるいは女性の人生を選び取る選択肢がみんなある、そこは自由だ、と。平たく言うと、人生を自由に選択できるような社会を作る議論のきっかけになれば。
依田 私たちが描きたいのは「子どもがいなければいいと思っている人たち」ではありません。社会から過剰に背負わされている母親の責任は決して母親だけの問題ではなく、社会が担うべき責任を母親にすべて押しつけている。「らしさ」を押しつけられることの問題を考えたいです。
私の母は、何の犠牲になっていたのか
―この本は、本当は子どもを欲しくなかったのに母親に「させられた」女性たちの話、でもあります。読み解いていくことは、子どもを欲しくない女性が生きやすくなるきっかけにもなるのでは。
近江真子・社会番組部チーフ・プロデューサー 女性は子どもを持つのが幸せ、子どもを持って初めて幸せになる、そういう規範が、子どもを持たない選択をした人や持てない人も苦しめています。「母親の後悔」を考えることは、その苦しみも合わせて取り外せるかもしれないと思います。
―男性の視点から「母親の後悔」をどう考えますか。
中島 正直に言って、びっくりしました。私自身も心が痛いなあと…。いただいた300通の熱量に恐れおののいたというのが正直なところです。
私自身も3歳の子がおり、実は、この本を読んでいるところは妻には後ろめたくて見せられていません。女性たちが「母親の後悔」を背負わされている大きな要因が、夫に代表される男社会、男性を基軸にした社会のシステムにあるのかもしれないということを、読めば読むほど感じるので。息苦しさをきちんと因数分解して理解することで、楽になれたらと思います。
-取材を通して、子どものころに感じていた「母親になりたくない」思いは変わりましたか。
依田 母は自分のせいで犠牲になったのでは、という思いがありましたが、「子どもを愛している、けれど母親の役割はつらい」と知ることで、決して私が生まれたせいではない、私の存在を否定しているわけではないんだと救われる気持ちでした。母親の苦しみがより明確になり、はっきりと見えてきました。犠牲とは私の犠牲ではなく、社会の犠牲なのだ、と。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい
私は、今年で29になる女ですが結婚願望がありません。子どもも欲しいと思えません。
理由は、親の離婚などの家庭内の混乱を経験したことや母親の責任が重すぎると感じること、将来に希望が持てないなどがあります。
だけど1番の理由は、この国がまだまだ男尊女卑だからだと思います。離婚後の養育費の未払いは多いし、性犯罪者に対する処罰も甘く、安心して家庭を持てるとは言えない部分が多いと感じます。
やはり政治から変わらない限り少子化は止められないと思います。
この記事しかまだ読めていませんが。私は後悔しています。娘のことはとても愛しています。毎日、何時も考えています。それがとてもしんどくなる時があります。
自分の母親に、母親なんだからと口ぐせのように言われます。自分らしく生きていくことができないです。
仕事がしたくても、母親だから時短勤務です。母親だからご飯は毎日手作りぢゃないといけない。どんなに疲れても外食したと言えば嫌味を言われて。そんなにいい母親になれない現実。
母親になっていなかったら、自分らしく生きていたんぢゃないかと思います。
後悔しています。
子供を愛しているからこその後悔です。
異性を育てているせいか、我が子といえど自分とは違う人間だと何度も思いしらされました。
そして一番後悔しているのは夫選びだったと思い至りました。
未だ子育て中の方が、今の辛さを後悔と言う形で結論付けるのは早すぎると思います。
本屋でこの本のテーマを見て、心にずーっと引っ掛かっていました。私は、子育ても仕事も人生もどれも棄てたく無かったから足掻きながら、悩みながら、此しかないと思いながら生き抜きました。ここ迄来て反省は数多いけど後悔してません。悩んでいるなら後悔はしてほしくないです。
私は結婚が遅く子供を持つ選択ははじめからありませんでした。子供が欲しかったか?と言われたら正直悩むかもしれません。欲しいと思っても悩むかもしれません。
若くして結婚した両親が子供を持って幸せそうにみえなかったのを子供ながら毎日感じていたので。
親の年代的に絶対の結婚適齢期があって、親が口うるさく結婚出来たら次は子供を持つ事が当たり前の幸せだと言われ、母親は自分の人生をどう生きたいか考え選択をする理解のある味方など居なかったと言っていました、早く実家を出たくて結婚したと。子供の立場から、なんて理不尽な親だと思いいくどか衝突しました。子供は親を選べない、じゃあ独身でいればよかったのにって。
今は大人になり理解出来るようになりました、親に親であるべきだからこうしてほしいなんて本当に残酷だなって。もし自分が子供にそう言われたら、今からじゃ遅いけど、でもめいいっぱい自分を生きて欲しいと思います。後悔している方、私は応援しています。
私は母親になった事は後悔していませんが、夫と結婚した事を後悔しています。生まれ変わったら絶対に夫とは出会いたくありません。出産してからモラ夫になり、誰が金稼いでやってると思ってんだ!何も出来ねーくせに!と散々暴言を吐かれたからです。ボロボロの体で育児家事夫の世話は絶対に無理です。死ぬほど大変だったので、生まれ変わったら2度と母親にはなりたくありません。今苦しんでいるお母さんを全力で助けてあげたいです。
本も読みましたし、番組も見ました。
私も母親になって後悔してます。
母親になる前にもっと母親になることについてのネガティブな情報もきちんと得て、冷静に判断していたら子を持つことはなかったと思います。
他のことならもう一度やり直し、リセットできることもあるが、子供がいない状態に戻すことはできない、そこから後悔という感情が出てくるのだと感じています。
放送をみましたが、まずテーマになったきっかけの本の内容がきちんと伝わらなかったです。母親になって後悔した人の後悔理由です。
本を読んでいないので、放送内容からの想像ですが、積み重ねてきたキャリアの中断や子育てと仕事の両立によるオーバーワーク、自分の自由な時間の減少や子育てに関する過度の責任感など様々なのでしょう。社会の中での女性の立場がまだまだ男女格差があり改善されるべき問題点と問題提起したかったのかもしれませんが、テーマの「母親の後悔」は問題提起以前に過剰に見る側の女性の感情を煽っている感じがしました。
「らしさ」を押し付けられることの問題点ともありましたが、それなら、父親らしさ、青年らしさ、さまざまそれぞれの立場で感じている人はいるはずです。短い時期でまとめるのは難しいとは思いますが、女性側の問題提起であったとしても、もっと掘り下げて取材や検討をしてから、丁寧な番組放送をして欲しかったですし、記事も書いて欲しかったです。
番組見ました。
母親になって後悔する方がいることすら意識したことがなく驚いたというより、むしろなぜ自分は後悔がしたことがないのかを考えました。それは多分、私は確かに子供二人を産み夫と共に育てはしましたが、妊娠中から子育て卒業した一年前までの24年間ずっと自分が母親ということをあまり意識せず、私という人間がたまたま子を授かり育ててきたからだと思いました。
親や夫、周りの人に恵まれていたことも大きかったですが、私は母親だから責任重大とは一度も思ったことはありません。長男は生後一か月で重度のアレルギー症状が出て、2歳でアナフィラキシーショックで死にかけましたが、そんなこともあるんだと受け止め、やれることをやったらあとは仕方ないと割り切りました。風邪で小児科に連れて行くと顔がジュクジュクの息子を見た先生に叱られることも多くいろんな小児科を転々としましたが、運よく理解のある尊敬できるお医者さんに出会い、以来二十数年かかりつけでお世話になっています。
どれだけ頑張ってもできないこともあります。母親だろうが何だろうが、どんな人にもそんな経験はあるものなので仕方ないと諦めると楽です。母親でも好きなテレビは見るし、ご飯も一緒に食べるし、絵本は自分の好きな本を読み聞かせ、好きな野球は一緒に見てると子供も好きになっていました。珍しく雪が降ったら自分が楽しいから二人を連れて雪だるま作り、友達の家にもよく連れて行って一緒におしゃべりしました。
母親というより一人の人間として自分が主体で生きてきたので、子供は自分の人生に更に楽しみをたくさんくれたと本当に感謝しています。そう思えたのは、広い心で自由に育ててくれた両親と、共に子育てを楽しんでくれた夫や優しく見守ってくれた夫の両親のおかげだと思います。子育てに後悔するかしないかは難しい問いですが、子供を産んでも、自分の物理的な時間はたとえ削られても、心は常に自分本位で自由にいられたらそこまで辛いこともないかもしれません。
ちなみに私は親にはほとんど手伝ってもらっていません。仕事はパートですが家事はほぼ自分がやっています。野球と音楽と映画が好きです。10年前から韓国ドラマも加わりました。趣味と子育てが両立できるとそこまで追い詰められないかもしれません。
世間?そんなの言わせておけばいいんです。あなたの人生はあなたのものですから。
私は、父親になって後悔しています。
もちろん私も、子や孫は愛しています。そうであるほど、これまで何十年もそのために気をつかって神経をすり減らし、ギクシャクと生きているのに疲れています(とくに妻に対して)。
それでも、過去は変わりません。この状態を満足して人生を閉じようと思います。
後悔しているのは、母親だけではありません。いつも女性を弱者として前面に出すことには、違和感を感じます。