所得制限にこだわってきた自民の方針転換にどよめき それでも岸田首相は言質与えない”安全運転” 子ども政策の国会論戦
正面から答えず「内容を具体化する」
「子ども予算倍増は、立憲民主党が何年も前から提案していた。(政府の取り組みは)遅過ぎるぐらいだが『異次元』ではなく『最低限』の少子化対策だ」
泉氏は、施政方針演説で「次元の異なる少子化対策」を打ち出した首相にそう説くと、児童手当の所得制限撤廃や支給期間の高校生までの延長など、独自政策の受け入れを迫った。
岸田首相は正面から答えず「まずはこども政策担当相のもとで、社会に必要とされる子ども・子育て政策の内容を具体化する」と繰り返すばかり。出産した親が育児休業を取得すると、保育園に通うきょうだいも自宅で育てるよう促される「育休退園」の改善に関しては「各市町村で適切に対応してほしい」と受け流した。
質問を終えた泉氏は記者団に「決めたことは『もう決めた』、決めていないことは『まだ言えない』では答弁になっていない。異次元の説明不足、はぐらかしと感じた」と批判した。
防衛費の増額とは違い「口だけ」?
具体的な説明を避ける首相の姿勢は、子ども政策の拡充より防衛力強化を優先させていることを際立たせた。今国会には防衛費を大幅に増やした2023年度予算案や、防衛財源確保のための法案が提出され、首相も必要性を雄弁に訴えているからだ。
立民の大築紅葉氏は、政府が6月にまとめる経済財政運営の指針「骨太方針」で少子化対策を具体化すると説明していることを指して「のんびりし過ぎている」と追及。「岸田政権は、子ども政策後回し政権だ。口先だけ『子どもファースト』『少子化対策は最重要政策』と言うのは、逆に政策軽視のあらわれだ」と断じたが、首相が挑発に乗ることはなかった。
所得制限の撤廃は「共通認識」に
ただ、子ども政策で変化の兆しもあった。自民党の茂木敏充幹事長の質問だ。
「子育てに対する経済的支援の抜本的拡充の要となる児童手当は『全ての子どもの育ちを支える』観点から、所得制限を撤廃すべきだ」。そう言い切ると、議場はどよめきに包まれた。自民党は所得制限にこだわってきた張本人で、背景に子育てを担うのは社会全体ではなく家庭だという保守的な考え方があるからだ。
所得制限は1972年の児童手当創設時から導入され、旧民主党政権下の2010年度に子ども手当に切り替わった際、廃止された。その後、参院で野党が多数を握るねじれ国会になり、野党第一党だった自民党の要求で復活した経緯がある。
自民党が「宗旨変え」したことで、所得制限撤廃という主張は事実上、与野党の共通認識になった。茂木氏は記者団に「必要な政策は常に見直し、時代のニーズも考えなければいけない」と強調した。
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