同性カップルも里親になれる 実父の虐待で「女性2人だと安心できる」子も 貴重な担い手だと知ってほしい
単身者が里親 もう1人は「補助者」
「信頼できる大人がいると肌で感じてほしい、と里親に申請した」。同居して15年になる東京都内の40代女性カップルは話す。
単身者も里親に認定される枠組みを活用し、1人が里親、もう1人が「補助者」として、これまでに保育園児と中学生、高校生の計3人を、数日から約2カ月の短期で受け入れた。
子どもの誕生日をケーキで祝ったり、水族館に連れて行ったりした。「何食べたい?」と聞いても「なんでもいい」としか答えず、感情を出さなかった子どもが、別れ際に涙ぐんで手を振ってくれた。
厚労省は「性的少数者を排除しない」
厚生労働省によると、虐待や親の病気などで親元で暮らせず、社会的な養護が必要な子どもは2020年度末時点で約4万2000人。約8割は、乳児院や児童養護施設などで暮らす。厚労省は「より家庭に近い環境での養育を」と里親家庭での受け入れ事例を増やそうとしているが、まだ途上だ。
里親になる要件を巡っては1987年、当時の厚生省が単身者も里親に認定できる通知を出した。2017年には大阪市が男性カップルを里親認定したケースが明らかになった。2019年には厚労省が、単身者や性的少数者を里親から排除しない旨を改めて通知した。
東京都は要件を緩和して「配偶者」
東京都では2018年、単身者の里親を支える「補助者」の要件を緩和。冒頭の女性カップルのように同性の「里親+補助者」の家庭が生まれた。さらに都は2022年4月、同性パートナーを「配偶者」とみなし、2人とも里親として養育に当たれるよう緩和を進めた。「里親の間口を広げたことで、多様な里親家庭の認定につながっている」と都の担当者は話す。
ただし、都は同性カップルの認定・委託数は「特定の恐れがある」として非公表。横浜市や千葉県はホームページの里親に関する「Q&A」で同性カップルや性的少数者も里親として認定できると記載している。
米国では「3%が同性カップル家庭」
静岡大の白井千晶教授(家族社会学)によると、米国では里子の3%が同性カップル家庭で育てられているという統計もある。白井教授は「海外事例を見ても、子どもへの悪影響はない。運用面で間口を広げていない自治体は改善すべきだ」と指摘する。
自治体などに里親の候補として性的少数者を受け入れるよう働きかけている一般社団法人「レインボーフォスターケア」(さいたま市)の藤めぐみ代表理事は「欧米では実父から性虐待を受けた女の子に女性カップルが求められるケースもあり、同性カップルは貴重ななり手だ。日本でも同性カップルが里親を担えることを積極的に伝えてほしい」と話している。
里親制度とは
原則18歳未満の子どもを預かる「養育里親」、被虐待児などを受け入れる「専門里親」、法的に実子と同じ親子関係を結ぶ特別養子縁組を前提にした「養子縁組里親」、親族が育てる「親族里親」の4種類がある。都道府県や政令市が認定し、児童相談所が委託。子どもの生活費などは支給される。里親に委託した子どもは2020年度末時点で計6019人。
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