保育園で「おむつのサブスク」広がる 保護者は補充も記名も不要 園と業者が契約、保育士の負担も軽減

海老名徳馬 (2023年3月31日付 東京新聞朝刊)
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サブスクリプションのサービスで利用しているおむつの棚を前に話す杉本槙子さん(左)と娘の藍梛ちゃん、保育士の長谷川由佳里さん(右)=愛知県豊田市の寺部こども園で

 乳幼児の保育に欠かせない紙おむつ。保育園などに保護者が持ち込まず、契約した業者が用意したおむつを必要な分だけ使える「サブスクリプション(定額利用)」のサービスが広がっている。忙しい親にも保育士にもメリットがあるという取り組みの現場を取材した。

「荷物が少なくなって楽になった」

 「おむつを補充する手間がなくなったのが一番うれしい」。3月半ばの午後6時ごろ、愛知県豊田市の寺部こども園。娘の藍梛(らな)ちゃん(2つ)を迎えに来た杉本槙子さん(35)が笑みを浮かべた。

 豊田市では昨年11月から、市内の公立こども園で紙おむつのサブスクのサービス「手ぶら登園」を無償で試験的に導入。今年1月には有償での利用に切り替えた。同園では現在、乳児クラスの55人のうち、7人が使っている。

 利用を始めるまで、園に子どもを迎えに来る杉本さんのかばんは、おむつがはみ出して落ちてしまいそうなほどふくらんでいた。1日に使う5枚ほどを毎日持参して棚に補充。帰宅後には翌日以降の分に名前を書く作業も必要だった。

 おむつ以外に、マットや布団など園に持っていく荷物は多い。共働き家庭で、フォトグラファーとしてフルタイムで働く杉本さん。「荷物が少なくなって楽になった。少しでも負担が減るのは大きい」と喜ぶ。

忙しい送迎の時間に生まれる余裕

 保護者がおむつに費やす時間が減れば、忙しい送迎の時間に多少の余裕が生まれる。保育士とのコミュニケーションが増えれば、預ける保護者の安心感にもつながりそうだ。4月に入園する乳幼児クラスの園児は、過半数がサブスクを使う見通し。乳児クラスを担当する保育士の長谷川由佳里さんは「おむつの枚数の確認作業が減り、子どもと向き合う時間が増えるのでは」と期待する。

 「手ぶら登園」は子育て支援事業を手がけるベビージョブ(大阪市)が2019年に始め、全国で3300以上の施設が導入。利用料は紙おむつのブランドによって異なり、2508円か3278円。おむつとおしりふきを必要なだけ使える。当初は私立保育施設での利用が多かったが、最近では公立で増えているという。保護者がより楽になるように、オプションで食事用の紙エプロンと手口ふき、簡易ベッド用の使い捨てカバーも提供する。

「使用済み」の持ち帰りにも変化

 園で使った紙おむつの取り扱いも変わってきている。従来は保護者が持ち帰り処分することが多かったが、厚生労働省は1月、施設での処分を推奨する通知を自治体に出した。保護者の負担軽減に加え、園でも1人ずつのおむつを管理する必要がなくなり、負担が減らせることなどが理由だ。

 ベビージョブが今年2、3月に公立保育施設がある全国の自治体に聞いた調査では、おむつを持ち帰らせている園がある市区町村は28%で昨年同時期から11ポイント減少した。保護者からの要望や厚労省の通知を受け、園での廃棄に切り替える自治体が多いという。

 一方、持ち帰りの理由に子どもの体調管理やトイレトレーニングの進み具合の確認などを挙げる自治体もある。

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