10代女性に多い「抜毛症」 ストレスで自分の毛を抜いてしまう… 部位からわかる原因と対処法は?

海老名徳馬 (2023年12月27日付 東京新聞朝刊)
 中学生の娘が学校の人間関係に悩み、髪の毛やまつげを抜いている。医者にはだめだと言われているが、つい怒ってしまいそうになり、私の精神が崩壊しそう-。そんな悩みが本紙に寄せられました。抜毛症はどのような症状で、どんな対策が考えられるのか。専門家の考えや新たな対処法を取材しました。 
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【左】日本抜毛症改善協会のプログラムの利用者。最初のカウンセリングでは地肌が広い範囲で見えるほど髪が抜けていた 【右】改善後の様子。髪が生えそろっている=いずれも日本抜毛症改善協会提供

女性が88% 不安でやめられない

 抜毛症は自分で髪や眉毛などの体毛を抜く症状。日本抜毛症改善協会(兵庫県西宮市)の統計では女性が88%を占め、特に10代などの若い世代が多い。

グラフ 抜毛症の性別と年代別の統計

 ひだまりこころクリニック(愛知県あま市、名古屋市)理事長で心療内科医、精神科医の野村紀夫さん(42)は「ほとんどの場合ストレスが原因」と語る。有病率は1~2.5%と推定。「本人は抜くことでストレスを解消できると考えていて、不安でやめられない」と説明する。

どんな時に抜くか記録 注意はしない

 対処法の一つとして、「どういうときに抜きやすいかを知ること」を挙げる。例えば日記をつけ、嫌なことがあった時には最大で星5つなどと数値化して記録。「星がいくつで抜いたか把握できれば、苦手な状況を自分で回避することにつながる」。抗うつ薬を処方する場合も多いという。

 抜毛の部位を鏡で見ることは「余計に気になる」ので良くない。家族の注意や指摘も気にする原因となる。親子関係が原因の場合もあり「親と二人三脚で治してもらいたい」。注意するのではなく「何があったのか心配し、カウンセリングなど第三者の視点を入れることも考えて」と語る。

新たな対処法「部位別メンタル分析」

 新たな対処法も注目されている。日本抜毛症改善協会では、これまでに改善に携わった1000人以上のデータを分析し、抜いている髪の場所で心理状態を推し量る、「抜毛部位別メンタル分析」と呼ぶノウハウを開発した。

 代表理事の中川英博さん(55)は「イライラしている場合はトップ、怒っていると前頭部、後ろのつむじの方は自分へのもどかしさ、自己表現ができないと感じている」と理解できると解説する。これに応じてどんな思いを抱えているのか説明すると、親は子どもの感情を、本人もなぜ抜くのかを理解できる。「親の代わりにカウンセラーが状況や改善策を伝えて、次第に親子のコミュニケーションも良くなる」という。

 中川さんによると、髪を抜く前には禁断症状が現れる。どんな場合に抜くか、人によって違う禁断症状をカウンセリングで探り、症状が出た場合には「髪をつまむ代わりにその人が好きな嗜好(しこう)品、お菓子や好きなゲーム、音楽など」で気持ちを落ち着ける。無意識に抜く行為を防ぐため、指に巻く分厚いテーピングも独自に開発した。

カウンセリング後に美容院で前向きに

 中川さんは西宮市内で美容院を経営する。2007年に訪れた客の症状についてブログなどで発信すると全国から問い合わせが多く寄せられ、対応するうちにデータが蓄積。2017年に協会を設立した。現在は全国11都市にいる協会認定のカウンセラーが同じ対応ができるプログラムをつくり、2020年には特許を取得した。

 カウンセリング後には美容院で髪形を整える。協会副理事長の福岡恭子さん(59)は「その場で髪が少しでも変わるとすごく喜ばれる。治したい思いが強くなり、改善に拍車がかかる」。独自の小さなウィッグを使うなど、抜毛症に特化した技術も多いという。

 協会では髪を抜かない状態が、学生以下なら3カ月、大人は4カ月継続すると改善、さらに半年の経過観察を経て「再発防止認定」をしている。プログラムで改善する人は多いという。

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