教員や保護者の負担が大きい卒業アルバム制作 子どもたちが授業で作ったら、みんな「満足」

アルバム制作の指導をする竹内佳保子教諭=いずれも新潟市立女池小学校で(一部画像処理)

 小中学校の卒業アルバム(卒アル)を児童、生徒が自分たちで作る試みが広がりつつある。卒アル制作は教員や保護者がレイアウトや写真選びなどを担い、負担となっているケースが多いが、デジタル化によって授業に取り入れることが可能になり、子どもたちの学びにもなっている。本年度から授業で実践している新潟市内の小学校に聞いた。

子どもたちの思いも収めたアルバムに

 「制作にかかわる活動も、アルバムと一緒に大切な思い出となり、写真だけでなく子どもの思いも収めることができる」

 本年度から小学6年生の授業で、卒アル制作に取り組んでいる新潟市立女池小学校6年4組の担任、竹内佳保子教諭(56)は話す。

 同市内では、地元の写真店「西脇写真館」が約10年前から、子どもたちを主体とした体験学習型の卒アル作りを進めてきた。社長の西脇拓さん(41)によると、きっかけは少子化で、卒業生数が10人ほどの小規模校が増えてきたこと。写真店にとっては、行事撮影などの仕事をしても卒業生が少ない学校での売り上げは小さい。人手不足もあり、どの店も小規模校の仕事を受けづらい状況になっていた。

デジタル化で、卒業アルバム制作も子どもたちに配布されたタブレット端末で完結できるように

なるべく大人がかかわる過程を減らす

 卒アル制作は、保護者らでつくる卒業対策委員会が担当するケースもあるが、教職員が担っている地方も多い。新潟市内の小規模校では、作業の負担が1人の担任に集中しており、「よくない状況だと思っていた」と西脇さん。「本来卒アルは子どもたちのもの。なるべく大人がかかわる過程を減らし、子どもたちが主体となった思い出づくりにしたい」と考え、製本会社が利用しているウェブ上の編集システムを使い、小規模校の子どもたちを中心に毎年4~5校で写真の選び方やレイアウトのこつなどを教えてきた。

 「一人一人が輝く写真を撮り、その思いを被写体である子どもたちと共有したい」という西脇さんの思いに、女池小も共感し、本年度から卒アル制作を開始。来年度の卒業生は110人と、西脇さんにとってこれまでで最も大きい学校で、6年生の担任4人とともに3回に分けて授業をすることにした。

写真の選び方などについて講義する西脇拓さん

 授業では、西脇さんが実際に撮影した写真を示しながら写真の選び方について説明。子どもたちはどんな写真を載せたいか考えながら、学級の目標やテーマを確認した。

「とにかく全員同じ枚数」から脱却

 竹脇教諭が卒アル制作を担っていた時は、なるべく平等に全ての子どもの写真を載せることに気をつかったという。「何千枚という写真の中から、ひたすら子どもの顔を探し出し、とにかく全員の写真を選ぼう、なるべく同じ枚数が載るようにしたいという視点で選んでいたので、一人一人の良さが分かる写真選びという視点にまではなかなか考えが及ばなかった」

卒アル制作が新たな学びにつながる授業に発展

 西脇さんは3年前から、卒アル制作支援システム「アルバムスクラム」を利用。顔認識人工知能(AI)を搭載しており、子どもごとに登場回数を検知するほか、回数が少ない子どもの写真を抽出してくれる。行事ごとにおすすめシーンや写りの良い写真を絞り込む機能もあり、効率的に作業を進めるのに役立つ。開発会社の「エグゼック」(東京都目黒区)の担当者から説明を受け、子どもたちもすぐに使いこなした。

 授業では、自分が写っている写真だけを探す子はおらず、座席が近い友達と「これ、学級の目標にすごく合っている写真だよね」「この写真、みんなの笑顔がすごくいい、協力している感じがすごく伝わるから選びたいね」「○○さんが全力なのが分かる、いい写真だよ」などの声が飛び交っていたという。

子どもたちは初めて利用するアルバム制作支援システムをすぐに使いこなしていた

卒アル制作がもたらす学びの効果

 西脇さんは「卒アル作りを自己理解や他者理解、仕事体験としてのキャリア教育、タブレット端末を使った情報通信技術(ICT)推進教育などさまざまな学習領域に結び付けて、授業として展開することが可能」と話す。

 3回のうち2回分の授業を終え、竹内教諭は「自分や友達の良さを探したり、自分が活躍できる場面、場所を見つけたりする学びになった。(アルバム完成までに)目標に向かって頑張っている写真を撮ってもらおうという意欲にもつながった」と満足げ。土田亮校長(58)も「地元の業者や企業などと連携した活動は、実社会とリアルにつながる価値ある体験で学びも深まる。今後も積極的に協働していきたい」と話した。

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