不妊治療の保険適用の回数制限を緩和してほしい 40歳以上は3回「あっという間に終わってしまった」 当事者の切実な声

斉藤和音 (2026年4月21日付 東京新聞朝刊)
 不妊治療の公的医療保険の適用が体外受精などにも広がってから4年を迎えた。晩婚化などで、不妊に悩む夫婦の約4.4組に1組が治療や検査を経験しているといわれる。費用が軽減され治療を受けやすくなった一方、保険適用の範囲を超えても治療を続けるか悩む夫婦は少なくない。年齢や回数の制限について条件緩和を求める声も上がっている。
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石渡さんが3月に支払った不妊治療の診療費の明細。自費の採卵や顕微授精などで約36万円に上った=本人提供(一部画像処理)

体外受精と顕微授精の「条件」

 神奈川県の会社員石渡悠起子さん(41)は昨年1月から不妊治療を始めた。精子を子宮内に人工的に注入する「人工授精」を一度試みた後、体外で受精させた受精卵を培養し、育った胚を子宮に移植する「体外受精」の治療に進んだ。

 2022年4月の保険適用拡大で、こうした人工授精、体外受精のほか、精子を細い針で卵子に直接注入する「顕微授精」や精巣から精子を採取する手術なども対象になった。

 ただ、体外受精と顕微授精は保険適用に年齢、回数の条件がある。治療開始時に女性が40歳未満なら1子につき6回まで、40歳以上43歳未満は3回までが上限と決められている。人工授精には年齢、回数の制限はない。

30代のうちに、と思っても

 石渡さんは32歳で結婚。互いにフリーランスで収入が安定せず、産休や育休などの制度もないため、経済的な理由から子どもを持つ選択が難しかった。

 離婚後、39歳で現在の夫と再婚した。「今なら責任を持って子どもを迎えられる」と思えたが自然には妊娠せず、仕事にも追われる中、病院を調べて受診できたのが1年後。40歳になっていた。

 保険適用上限の体外受精を3度試みたが妊娠しなかった。「あっという間に3回分が終わってしまった。39歳までに治療を始められていたら…とも思うが、どうしようもなかった」と振り返る。

貯金を崩すたび「あと何回…」

 さらに自費で採卵を7回行い、妊娠率を上げるための先進医療や受精卵の染色体の数を調べる着床前遺伝学的検査も受けた。

 これまでにかかった治療費は約500万円に上る。勤務先の福利厚生で治療費の補助を受けているが足りず、貯金を取り崩している。

 治療がうまくいかないたびに、銀行口座の残高を見ては「あと何回治療できるのか」と考えてしまう。採卵の痛みやホルモン剤の投与など体への負担も大きい。「保険適用の上限を設ける必要性は理解できるが、もう少しお金の心配をしないで治療を受けられたら、精神的につらい思いをしなくて済むのに」と訴える。

アンケートで89%が回数制限に反対

 不妊に悩む人を支援するNPO法人「Fine」(東京)が昨年11~12月に実施したアンケートでは、体外受精と顕微授精の回数制限について89%の人が「反対」と回答した。「回数制限があることでプレッシャーがとてつもない。上限に達したら子どもを諦めなければならないかもしれない」(32歳女性)などの意見が寄せられた。

グラフ 不妊治療の自己負担の割合

「実態に合った見直しを」

 年齢制限については、20代の多くが賛成する一方、年齢が上がるにつれて反対の割合が増えた。39歳以下では、年齢制限には賛成する一方で、回数制限に反対する人の割合が多かった。

 治療費については、保険診療(3割負担)と先進医療(10割負担)を併用した人は66%だった。2022年の28%、2023年の37%に比べ、大幅に増えている。保険診療のみで治療している人は2025年は23%で、2022年の半分に減った。

 野曽原誉枝(のそはらやすえ)理事長は「保険適用が必ずしも経済的負担の軽減につながっていない現状がある。費用面だけではなく、年齢や回数といった制度設計など、より実態に合わせた見直しが求められている」と指摘した。

 アンケートは、不妊治療の保険適用が拡大された2022年4月以降に不妊や不育症治療を経験した、または治療中の人らを対象に、男女373人から回答を得た。

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