夫婦で育休を取ったら収入はどのくらい減る? 社労士が解説「8割前後は確保できます」

(2021年5月27日付 東京新聞朝刊)

 読者からの相談を元に、専門家の解説やアドバイスを紹介し、お金の疑問をひもときます。妻が妊娠したという男性から、「育休を取って子育てを頑張りたいが、収入が気がかり」という相談が寄せられました。

Q.育休中の収入はどのくらい?

 最近、妻(30)の妊娠が分かりました。共働きで別々の会社に勤めており、月給は私(30)が30万円、妻が24万円ほど。子どもが生まれたら私も育休を取って子育てを頑張るつもりですが、夫婦で休むとなると、やはり収入が大きく減ってしまうのでしょうか。また、家庭や仕事の都合に合わせて、育休を何回かに分けて取ることもできるのでしょうか。

回答者:社会保険労務士・相川裕里子さん

 1968年、千葉県出身。横浜市で社労士事務所「AIコンサルティング」を夫婦で経営。著書に「世界一やさしい障害年金の本」(学研プラス)。

A.「育児休業給付金」+「保険料の免除」=育休前の8割前後になります

 育休は原則、夫婦ともに子どもが1歳になるまでの間に取得できます。正社員だけでなく、有期雇用やパート、アルバイトなどの非正規社員も対象です。

 育休中は雇用保険から「育児休業給付金」を受け取れます。支給額は、最初の半年間がおおむね休業前給与の67%。質問のケースでは夫が月20万円、妻が月16万円。7カ月目以降は50%に減額され、夫15万円、妻12万円になります。

 さらに、育休中は健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料の免除を受けられます。免除されても、将来の年金額は育休中も納付したものとして計算されます。給与が出ないため雇用保険料の負担もありません。給付金には所得税がかからず、翌年の住民税の負担も減ります。

 このため、手取り額で見ると育休前の収入の8割前後は確保できる計算に。仕事を休むことで賞与が減る可能性もありますが、少なくとも月給ベースでは減収のダメージは低いといえそうです。

「出産手当金」「出産育児一時金」も受け取れます

 また、妻は出産前の6週間と出産後の8週間、健康保険から「出産手当金」を受け取れます。育休給付金とほぼ同じ額が支給され、保険料の免除も受けられます。出産時には健保から原則42万円の「出産育児一時金」が支給されます。

 妻は産後8週間を過ぎてから育休を取得できますが、夫は出産の日から取れます。現行の制度では、妻の育休は1度だけですが、夫は「パパ休暇」という特例で出産後8週間までに1回目、それ以降の時期に2回目と、分割して取れます。妻が大変な出産直後の時期に夫が休んで子育てを担い、一度職場に復帰した後、妻の育休明けに合わせて夫が2回目の育休を取ることもできます。

「パパ・ママ育休プラス」で給付金の期間を延長できます

 夫婦ともに育休を取り、一定の条件を満たせば「パパ・ママ育休プラス」が使えます。給付金を受けられる期間は1年のままですが、終了日を子どもが1歳2カ月になるまで延ばせるという制度。子どもが保育園に入れずに職場に復帰できない場合は、最大2歳まで延長できます。

 育休から復帰後、子育てのために勤務時間を減らせば、給与が下がるかもしれません。その場合、子どもが3歳になるまで、出産前の給与水準で年金額を計算してもらえる制度も。健康保険料や厚生年金保険料をすぐに引き下げてもらえる特例もあります。

〈もっと詳しく〉男性は来年10月から「出生時育児休業」で最大4回取れるように

 厚生労働省の2019年度の調査によると、民間企業での育休取得率は女性が83%なのに対し、男性は7.48%。男性の取得率は年々増えているが、女性との差は依然大きい。

 政府は男性が育休を取りやすくするための法改正案を今国会に提出している。現行の「パパ休暇」に代わって「出生時育児休業」(男性版産休)を創設し、産後8週間までの間に計4週間分の休みを2回に分けて取れるようにする。通常の育休も2回に分割できるように改め、出生時育休と組み合わせることで最大4回取得できるようにする。

 出生時育休を使うと、例えば妻の出産直後や、里帰りから戻ったときなどに分けて休める。その後、妻の職場復帰のタイミングなどで通常の育休を使って3回目、4回目の休みを取ることもできる。通常は取得の1カ月前までとなっている申請期限も、出生時育休では2週間前までとする。改正案が成立すれば、来年10月のスタートを想定している。 (河郷丈史)

コメント

  • 収入面での苦労が絶えないです。第二子を出産する場合、第一子の育休から連続して休暇に入れればよいですが体力的にも気持ち的にもまだ望んでいない場合、時短勤務からの育休では手当が激減してしまうのが残念です。
     女性 30代 
  • 細切れで休みをとれるよりも、週休が多い状態で緩やかに復帰したり、早期にテレワークで復帰しながら業務量を増やしていくなど、より柔軟な働き方を認めてもらえる方が、夫婦双方にとってはメリットが大きいと感じま