新生児家庭に1万円相当のギフトボックス 手渡して孤立を防ぐ、埼玉県の新年度事業
相談に来られない人に伴走型支援
埼玉県によると、同様の事業は大阪府や滋賀県、奈良県でも実施している。埼玉では、4月1日から来年3月31日までに生まれた子どものいる家庭が対象で、県への申請により市町村などが届ける形を想定する。
現物給付としたのは手渡しを通じて世帯とつながるためで、大野元裕知事は13日の会見で「こだわったのは直接お渡しいただくこと。通常ではなかなか相談に来られない方に伴走型支援を行いたいと考える市町村とつながることができる」と狙いを話した。申請のない世帯には市町村の支援員が訪問するなどして支援につなげる考えだ。
63市町村のうち39が参加の意向
埼玉県によると、県内では子どもの出生への支援として27市町村が食料品や商品券などを支給している。コメを直売所で支給するなど経済的支援の側面が強い自治体や、絵本を渡すのみの自治体もあり、世帯の孤立防止につなげられているかは不明という。
事前の調査では、県の事業が始まれば参加すると答えたのは、全63市町村のうち、現行自治体に新規12市町を加えた計39市町村だった。訪問か来庁か、県が契約を想定する「見守り」可能な業者が届けるかなど、渡し方は各自治体が判断する。
子育て世帯は歓迎「保健師さんの聞き取りがセットだとうれしい」
届け方が鍵 悩みごとを拾い出せるか
ただ、埼玉県の事業では届け方が市町村に委ねられる。市町村側が体制を整えていなければ、支援につながらない「あげっぱなし」で終わってしまう懸念もある。
「届け方がその後の支援の鍵を握る」と話すのは、妊産婦支援に詳しい恵泉女学園大学の高橋睦子教授(福祉政策論)。「妊娠期からコンタクトを取り、顔を見知った人がギフトボックスとともに訪問。悩みごとを拾い出すのが理想」と自宅訪問の体制づくりとボックスはセットであるべきだと指摘する。
伊達市の例 妊娠中の訪問で信頼関係
実際に、新生児への贈り物を支援につなげている福島県伊達市では、妊娠中に保健師が離乳食や子ども食器などの贈り物を持って訪問する。担当者は「産前に会っておくと、産後すぐに連絡が取れ、必要に応じて支援につなげられる。ゼロ歳のうちから信頼関係を築いておくと、大きくなってからもお母さんの方から保健師を覚えていて連絡をくれる」とメリットを話す。
高橋教授によると、国内で妊娠期から就学前までの支援につなげられている自治体は数少ない。多くの自治体では出産前の母親学級などで新生児の扱い方を学ばせるが、その後、保護者が親になっていく過程は放置されていることがほとんどだという。
高橋教授は「妊娠期から就学前までに、(保護者と自治体が)いかに対話を重ねるかが大切。ギフトボックスは、切れ目ない支援の原石と言える」と期待を込める。その上で、自治体側はボックスを契機に適切な支援につなげられているかの検証もすべきだと指摘した。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい