〈大滝麻未さんの子育て日記〉5・産後3カ月で長男と夫同行の初遠征 心強かったチームのサポート
妊娠・出産 サッカー界が後押し
前回の日記で、妊娠から競技復帰について書きました。背景には出産前の2021年に日本女子サッカー初のプロリーグ「WEリーグ」が誕生し、各クラブが選手の妊娠・出産のあり方を見直し始めた時期だったことがありました。
20年のシーズンが終わり、現役続行か引退かで悩んでいたころ。国際サッカー連盟(FIFA)が12月に、妊娠・出産に関する新ルールを発表したのです。翌年9月には、プロリーグ開幕が控えており、「続けなさい」と背中を押される思いでした。
FIFAは、(1)最低14週の産休(2)産後復帰した際の選手登録(3)産休中は、少なくとも賃金の3分の2を確保-という3項目の保障をクラブに義務付けました。従わない場合、選手への賠償が命じられます。こうした世界基準の後押しもあり、私が所属していたジェフユナイテッド市原・千葉レディースでは、FIFAのルールに準じた保障に加え、産休・育休中も賃金を全額支給すると全選手に約束してくれました。
実際に、復帰後のサポートは心強いものでした。合宿やほとんどのアウェーゲームに、夫と柚生(ゆずき)を同行させてもらいました。子どもと過ごす時間を持ちながらも競技に専念できたこと、いつでもすぐ近くで家族に支えてもらえたことは、特に精神面でスムーズな復帰の支えとなりました。
挑戦を選んだからこそ見えた景色
柚生にとって初めての遠征は、産後3カ月の強化合宿。私たち夫婦にとっても初めての経験です。「1カ月の海外旅行に行くんだっけ?」と笑ってしまうほどの大荷物を車に詰め込み、万全の態勢で挑みました。遠征先で合宿中に柚生が生後100日を迎え、チームメートに盛大にお祝いしてもらいました!
遠征先の食事は、ほとんどの場合バイキング形式だったため、私が食堂に着くと、当時の監督は「俺が抱いててやるから取ってきていいよ!」と、うれしそうにいつも面倒を見てくれました。チームメートも「柚生が疲れを癒やしてくれる!」と心からかわいがってくれて。子育てしながらのプレーに壁を感じることもたくさんありましたが、この挑戦を選んだからこそ触れられた優しさや、見えた景色がありました。
アスリートではなくなった今、どんな職業であっても、女性にとって育児とキャリアの両立がチャレンジングであることを改めて痛感しています。母親であると同時に一人の女性として、自分らしく生きることがエネルギーになると、この経験が教えてくれました。誰かの背中を後押しする日記となりますように。
大滝麻未(おおたき・あみ)
1989年、神奈川県生まれ。女子サッカー元日本代表。夫は英国とイタリアのハーフ。0歳2歳の兄弟を日英伊の3カ国語で育児中。
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