夏休みの宿題で楽器づくりに挑戦! 材料は身近なもので新たな発見も 愛知のユニット「kajii」が魅力を語る

大野雄一郎 (2025年6月11日付 東京新聞朝刊)
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「食琴」など数々の自作楽器を紹介する「Kajii」のクマーマさん(左)と創さん=愛知県大治町で

 約1カ月後に控える夏休み。自由研究や工作の宿題では、身の回りのものを素材にした楽器作りに挑戦してみてはどうだろうか。音が出る楽しさを味わえるだけでなく、取り組んでみないと分からない新たな発見もある。日用品を使った創作楽器を生み出して演奏活動するユニット「kajii(カジー)」の2人に創作楽器の魅力を聞いた。

創作楽器は180種類以上

 大きさの違う29個の食器を並べて、菜箸でたたいて音を奏でる「食琴(しょっきん)」。さまざまなキッチン用品をパーカッションセットに仕立てた「ヒミツキッチン」…。これまでにカジーが生み出した楽器は180種類以上。見た目に楽しく、聴くと驚きがあるものも多い。

 カジーは「クマーマ」こと熊谷将(すすむ)さん(40)と、「創(そう)」こと原創平さん(36)が2013年に結成。愛知県大治町を拠点に、全国各地で千回ほどの公演を重ねてきた。

 創作楽器の思い付き方は「さまざま」。既存の楽器を身近なもので再現してみようと考えることもあれば、コンサートに来た子どもの発想をもとにすることもある。最近では「カタツムリの殻」というアイデアを聴衆から得て、複数個をひもでつるして奏でる楽器を考え付いた。創さんは「アイデアを思い付いたときは楽しいし、作り上げた瞬間は喜びがある」と話す。

演奏が苦手でも大丈夫!

 だが、実際に作るのは楽ではない。「『安く簡単に作れそう』と言われることも多いが、そうでもない」と創さん。材料の集め方や使う道具を考え、素材を加工する作業を繰り返し、さらに試作も重ねていく。工程を考える力のほか、集中力や根気も必要な作業だ。

 制作の過程では意外な発見もある。例えば、トイレットペーパーの芯の太さがメーカーによって違うことや、飲料のペットボトル容器も分厚さや形状が異なることなど、普段なら気にもしないことに気付ける。音が鳴る部分を直接見られるため「楽器の構造を根本的なところから知ることができるのも良い経験になる」(クマーマさん)という。

 27日には、身近な材料で創作楽器の作り方を紹介する書籍が出版される。創さんは「演奏が苦手でも大丈夫。気楽に制作にチャレンジしてみて」と話している。

 書籍は「kajiiのふしぎな手づくり楽器」(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス、1980円)。

あり方が変わりつつある自由研究 

 夏休みの宿題としてメジャーな「自由研究」。最近はそのあり方が変わりつつある。元小学校教諭で教育評論家の親野智可等(おやのちから)さんは「夏休みを自由に過ごさせたいという価値観の広がりや、先生の働き方改革の流れで、夏休みの宿題そのものが全体的に減ってきている」と指摘。自由研究も「夏休みの『自慢』をつくりましょう」という言い方で出されたり、複数ある宿題の中から任意で選択したりする形式になってきているという。

 取り組む際には、どのような方法が理想的なのか。親野さんは「子どもが日頃忙しくてできなかった『好きなこと』をたっぷりやらせてあげる機会にしてみては」と提案する。サッカーやピアノの練習、昆虫採集など、その子が興味のある分野に熱中させることで「脳の処理能力が上がり、地頭の良い子に育つ」。その様子を保護者が撮影して印刷し、ノートなどに貼り付けてコメントを添えれば、手軽に宿題を完成させられる。

 このほか、実験や工作などに挑戦するのも有益で「新しい経験を積めばその子の引き出しが増えて興味が広がっていく」。ただ、取り上げる題材は「紹介や推薦にとどめ、子どもに強制するのはやめて」と念を押す。

 

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