こども家庭庁の予算は「無駄」と批判されるけれど… 概算要求7.4兆円の内訳を見てみると、本当になくして大丈夫?

 財務省は、2026年度政府予算の編成に向けた概算要求を締め切った。国の予算では、女性や子どもに関する予算が「無駄」としてネット上でやり玉に挙がることがあるが、誤解を生む投稿も目立つ。今回、こども家庭庁の概算要求から、この批判が妥当か確認してみた。
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相次ぐ批判「1人1000万円の現金給付を」

 予算の概算要求の締め切りは毎年8月。各省庁は予算を査定する財務省に対して、翌年度の政策や事業執行に必要となる大まかな金額を提出する。

 2026年度に向けたこども家庭庁の要求は総額7兆4229億円。現在執行中の2025年度当初予算に比べて959億円多くなった。保育の質向上につなげるための「ミドルリーダー保育士」の育成や、卵子凍結モデル事業などの新規事業も増額理由だ。

 以前から、7兆円を超える子ども家庭庁の廃止を求める投稿はSNS上で相次いでいた。「こども家庭庁を廃止すれば、年間7兆円の財源が浮く」「去年生まれた新生児に1人1000万円を現金で配った方が安く済む」といった内容だ。

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7月、学童保育の待機児童について説明する三原じゅん子こども政策担当相=東京都千代田区で

保育所や学童の運営費、児童手当で約8割

 では、こども家庭庁を簡単に廃止することは可能なのか。

 個々の要求で金額が最も大きいのは、保育所や放課後児童クラブ(学童)の運営費などで約2兆5300億円だ。児童手当約2兆1200億円、育児休業などの給付金に約1兆600億円が続く。これらで全体の要求額の約77%を占める。

 今や子育て支援として欠かせない施策が多く、「廃止」して減税のための財源にしたり、全てを現金給付で配ったりするという主張は現実的ではない。

 残りも、障害児の支援や虐待防止など困難を抱える親子の支援に約8800億円、大学などの授業料減免など約6500億円と、簡単に削れる事業とはいえない。

 「無駄」批判を意識してか、こども家庭庁は公式noteで、大半は市町村などの地方自治体に交付された上で事業者や家庭に支出されており、「予算は全体として、(中略)かなり切実な課題への対応のための経費を計上している」と説明する。

 「外部委託ばかりで中抜きが多い」という別の指摘にも、予算総額に占める委託費の割合は2025年度予算で0.06%と、全省庁で最小だったということを示す。

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廃止を求める声が相次ぐこども家庭庁

「男女共同参画」の予算にも似たような批判

 こども家庭庁と同様に、事業を廃止すれば巨額の財源が浮くと指摘されることがあるのが「男女共同参画」の関係予算だ。性犯罪対策やDV被害者支援などに使われ、内閣府男女共同参画局のみで2025年度当初予算は約15億円だ。

 事業の廃止を訴える投稿につながっていたのは、内閣府男女共同参画局がかつて示していた予算規模が莫大(ばくだい)だったからだ。男女共同参画社会に少しでも関係がありそうな各省庁の予算を足し上げていた結果、毎年10兆円前後になっていた。

 だが、実際は、介護給付の国庫負担金、保育、障害福祉サービスなど男女共同参画と直接関係のない事業が総額の約9割を占めていた。

 10兆円前後の予算が示されていた結果、SNS上では「男女共同参画費とこども家庭庁で17兆円。廃止すれば減税の財源になる」といった内容の主張も拡散する。

 男女共同参画局は「誤認識が生まれる」として、2025年度から各省庁の関係予算を足し上げるのは、「男女共同参画を目的とする予算」だけに絞った。そうすると、10兆円規模だったものが計約3567億円に縮んだ。

元記事:東京新聞デジタル 2025年8月30日

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  • そら says:

    ミドルリーダーになる保育士の予算ですが、処遇改善をもらうためにキャリアアップを受けて、経験年数のみでやる気のない保育士がミドルリーダーになれる状況はいかがなものでしょうか?受け身のキャリアアップによる処遇改善で保育士内格差(パートと正規)が広がっています。給与面待遇面で縦社会が一層増して保育士の質の低下を感じます。

    正規経験年数ではなく(子育てしていたパート保育士にもチャンスを)主体的に自主的に学ぼう成長しようとしている保育士にミドルリーダーになれるように、公平に保育士の質を測る試験を作ってほしいです。

    そら 女性 40代

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