「学校に戻らなくてもいいよ」 世田谷区が不登校支援施設オープン フリースクールの知恵で多様な学び

神谷円香 (2019年2月1日付 東京新聞夕刊)
 不登校の子どもを受け入れる全国でも珍しい公設民営の支援施設が1日、東京都世田谷区に開設された。運営に携わるのは、都内で30年以上もフリースクールを運営するNPO法人「東京シューレ」(北区)。子どもたち自身が自分に合った学習法を見つけるフリースクールの手法に行政も着目し、多様な学びの場づくりに踏み出した。
写真 「ほっとスクール希望丘」が入る複合施設。2階の外階段から出入りできる=東京都世田谷で

「ほっとスクール希望丘」が入る複合施設。2階の外階段から出入りできる=東京都世田谷区で

「民間のノウハウを」初めて運営者を公募

 広々した空間で過ごせる多目的室や、タブレット端末も使える学習室、自炊できるキッチン。日当たりのいいベランダもある。「ほっとスクール希望丘(きぼうがおか)」と名付けられ、世田谷区船橋の旧希望丘中学校跡にできた複合施設の2階に入る。

 不登校の子どもの学校生活への復帰や社会的自立を支援するため、自治体が空き教室や学校以外の場所で個別に学習指導などをする「教育支援センター」との位置付け。ただ、区は2016年の教育機会確保法の成立を受け、教育支援センターを必ずしも学校への復帰を求めない施設にすると方向性を変え、民間のノウハウを得ようと初めて運営者を公募した。

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多目的室の円形テーブルに座る奥地理事長(左)と、ほっとスクール希望丘の今井睦子施設長

「東京シューレ」利用無料と方針に共感

 東京シューレは1985年、当時は登校拒否と呼ばれ、学校に行かない子どもが社会問題になる中、「学校以外に子どもの居場所、学びの場を」と保護者らが開設。子どもが学びたいことを尊重しながら個別性の高い教育の場を提供し、フリースクールのパイオニアとして多くの子の救いの場となってきた。

 奥地圭子理事長は、世田谷区の施設でも「子どもが『学ぶのは楽しい』と感じる経験を増やしたい」と語る。都内と千葉県で計4カ所のフリースクールを運営するが、補助はほとんどなく、保護者に金銭の負担がかかるのに罪悪感を感じる子もいるという。利用無料となる公的施設のメリットと、「学校復帰を目指さなくてもいい」という方向性に共感し公募に手を挙げた。

「独自性を出し、官民連携のモデルになれれば」

 区教育相談・特別支援教育課の松田京子課長は「東京シューレは卒業生も多くいるので体験談も聞ける」と説明。子どもたち自身がイベントを企画運営する機会を設けるなど、社会で自立する力を得られるよう取り組んでいく。

 施設の定員は35人で、利用できるのは私立校の在籍者を含む区在住の小中学生。複合施設3階には、30代までの若者が利用できる青少年交流センターも入り、区は連携した活動も考えている。

 奥地理事長は「地域の理解を得ながら独自性も出し、行政との連携のモデルになれれば」と期待している。

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  • 弥太郎 says:

    行きたくなる学校、居場所を増やしたいです。民間でやりたくても資金が足りず、専門家を配置することも難しい。公的支援が必要です。

    弥太郎 女性 70代以上
  • 匿名 says:

    学校に戻らなくていいよ
    が第一にくるのは、区の事業としては疑問です。学校に戻れるなら戻りたい子もいっぱいいるはず。

  • 匿名 says:

    世田谷区の取り組みはとてもいいことだと思います。ただ、定員35名では、区の不登校生全体から
    したら、受け入れ数が少ないです。世田谷区にはほかにほっとスクールが2か所あり、それぞれ定員20名位だったかと思います。ほっとスクールに入れるのは、不登校期間が長くなってしまった人からになります。不登校1年未満では入れません。今は、クラスに一人は不登校生がいるとなるともう少し行政は生徒の受け入れをがんばらないといけないです。ただ、不登校の解決は、子供へのアプローチよりも親にカウンセリング(親の問題)を解決するほうが解決が早いです。

      
  • 匿名 says:

    軽度発達障害、HSCの小学生の息子が不登校です。強い叱責は逆効果と伝えていたにもかかわらず、度重なる担任からの強い叱責とそれに同調したクラスでいじめにあい適応障害。不登校になり2年経ちました。夜は眠れず死にたいと言い度々発狂しそうになる息子の見守りで夫が離職。私(母)だけの収入になりまもなく貯金が底をつきます。担任は密室で胸ぐらを掴んだり土下座をさせたことを認めず、教育委員会も学校も「担任がやってないというからそれ以上はねえ」と迷惑そうな態度。それにも強いショックを受け、夫はパニック障害、私も心身症になり通院しています。フリースクールは高くて断念、最近できたクラス〇〇パンも結局高いし親がついてないと学習できないので解約しました。無料のフリースクールなんて羨ましい。

      
  • 匿名 says:

    学校に戻らなくて良い、という安心感は子供にも親にも必要だと思います。できれば…障害のある不登校児のこういった場もほしいです。辛い目にあい親たちが学校に訴えても(支援学級、学校)もみ消され泣いています。

      

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