「学校に戻らなくてもいいよ」 世田谷区が不登校支援施設オープン フリースクールの知恵で多様な学び
「民間のノウハウを」初めて運営者を公募
広々した空間で過ごせる多目的室や、タブレット端末も使える学習室、自炊できるキッチン。日当たりのいいベランダもある。「ほっとスクール希望丘(きぼうがおか)」と名付けられ、世田谷区船橋の旧希望丘中学校跡にできた複合施設の2階に入る。
不登校の子どもの学校生活への復帰や社会的自立を支援するため、自治体が空き教室や学校以外の場所で個別に学習指導などをする「教育支援センター」との位置付け。ただ、区は2016年の教育機会確保法の成立を受け、教育支援センターを必ずしも学校への復帰を求めない施設にすると方向性を変え、民間のノウハウを得ようと初めて運営者を公募した。
「東京シューレ」利用無料と方針に共感
東京シューレは1985年、当時は登校拒否と呼ばれ、学校に行かない子どもが社会問題になる中、「学校以外に子どもの居場所、学びの場を」と保護者らが開設。子どもが学びたいことを尊重しながら個別性の高い教育の場を提供し、フリースクールのパイオニアとして多くの子の救いの場となってきた。
奥地圭子理事長は、世田谷区の施設でも「子どもが『学ぶのは楽しい』と感じる経験を増やしたい」と語る。都内と千葉県で計4カ所のフリースクールを運営するが、補助はほとんどなく、保護者に金銭の負担がかかるのに罪悪感を感じる子もいるという。利用無料となる公的施設のメリットと、「学校復帰を目指さなくてもいい」という方向性に共感し公募に手を挙げた。
「独自性を出し、官民連携のモデルになれれば」
区教育相談・特別支援教育課の松田京子課長は「東京シューレは卒業生も多くいるので体験談も聞ける」と説明。子どもたち自身がイベントを企画運営する機会を設けるなど、社会で自立する力を得られるよう取り組んでいく。
施設の定員は35人で、利用できるのは私立校の在籍者を含む区在住の小中学生。複合施設3階には、30代までの若者が利用できる青少年交流センターも入り、区は連携した活動も考えている。
奥地理事長は「地域の理解を得ながら独自性も出し、行政との連携のモデルになれれば」と期待している。
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