<記者の視点>わが子も「問題児」だった… 横須賀市の学童保育預かり拒否 自治体は福祉の視点を
「断られても仕方ない」 多数の反響にやり切れない思い
神奈川県横須賀市にある民設民営の学童保育が1年前、「指導員の言うことを聞かない」と児童2人の預かりを拒否した。保護者は、事業者に補助金を出している市に相談したが、いまだに学童を利用できずにいることを東京新聞と「東京すくすく」で報じた(「二度と学童に来るな」事業者に怒鳴られ、子どもが通えないまま1年…横須賀市は介入打ち切り)。
記事に対し、東京すくすくには「断られても仕方がない」との指摘が多数寄せられた。「子どもに問題があるのに受け入れろと要求するのはモンスターペアレント」「学童にそこまで求めるな。現場は回らない」。つまり「事業者が子を選ぶのは仕方がない」という意見だ。一定数はあると思ったが、ここまでとは正直やり切れない思いだった。
指導員「いろんな子がいるのが学童」 徐々になじんだ息子
私も手のかかる「問題児」の親として、2年前まで「受け入れを拒否されても仕方がない」と思っていた。
息子は1年生の時、同学年の友だちに乱暴する、指導員の言うことを聞かない、ルールを守らない-と問題行動のオンパレードだった。毎日学童に預けるのが指導員に申し訳なく、夏休みは遠方の両祖父母宅へ何日も行かせた。
そんな息子に粘り強く付き合い、学童生活に徐々になじませてくれたのは指導員たちだった。「いろんな子がいるが、それが学童。任せていただいて大丈夫ですよ」。その言葉に励まされ、学童と密に連絡を取りながら2年間息子を見守ってきた。3年生になった今、息子は生き生きと学童に通い、目立った問題行動もなく落ち着いている。
たしかに、受け入れ側の苦労もあるだろう。ただ、そもそも学童保育は「サービス」でなく「児童福祉」と位置づけられている。その視点は見落とされがちだ。
子どもの安全と保護者の安心 視点欠く横須賀市
全国学童保育連絡協議会の佐藤愛子事務局次長は言う。「『学童はお金になる』と参入し、『言うことを聞かないならやめてもらう』との意識で運営する事業者が増えている。でも本来は指導員に、問題のある子が納得できる指導をする力が求められる」
2月の市議会では、「子どもの立場で考えていない」との指摘も出たが、市は「事業者と保護者が話し合いにより解決してほしい」と繰り返すばかり。まるで人ごとだ。補助金も出しているのに当事者意識が欠けていないか。
子どもが安全に過ごせ、保護者が安心して預けられる-。取材では、学童保育にとって一番大事な視点が置き去りにされていると強く感じた。2015年に見直された子育て支援制度で「市町村事業」と位置付けられた学童保育。必要な支援を受けられない人をなくすためにも、「保育の質」の担保について、自治体がもっと手厚く関わる必要がある。
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