いま話題の「STEAM教育」とは ICTを活用して創造性と問題解決力を育む、教科を超えた21世紀の学び

(2018年2月23日付 東京新聞朝刊を編集)

 教科の枠組みを超えた学びとして注目されている「STEM(ステム)」教育、もしくは「STEAM(スティーム)」教育を知っていますか。
Science(科学)
Technology(技術)
Engineering(工学)
Mathematics(数学)
と、
Arts(アート・リベラルアーツ)
の頭文字から取られています。今の子どもたちには知識や技能を学ぶだけではなく、それらを活用して問題を解決したり、新しい価値を創造する力が求められています。教科の枠組みを越え、ICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)も積極的に活用した総合的な学びについて紹介します。

◇論理思考、問題解決の「STEM」とは
 数学や科学の基礎を学ぶだけではなく、技術や工学的なアプローチで、社会問題への解決や技術革新をもたらす人材育成のため必要とされる教育です。理数系の教育分野が主となります。

◇創造性、自己表現の「STEAM」とは
 STEMが論理やシステムを考える傾向が強いのに対し、アートを加え、創造性を強く打ち出しています。

 そのほか、スポーツの「S」を足してSTEAMS、ロボットの「R」を足してSTREAMSという概念もあります。

 国内外の研究で、10~20年後、今ある職業の半分はAI(人工知能)やロボットに代替されると予測されています。そういう世の中にもなってもイノベーション(技術革新)をもたらす人材を育てる教育として注目を集めており、国家戦略と位置付けている国もあります。

 これまでは義務教育、高等教育を経て社会に出て働くという明確な順番、答えがある社会で、学びも教科別で直線、探究的な側面が強かったのです。

 現在の社会では複雑な問題や課題が増え、より創造性が求められてきています。

 米国では2011年にバラク・オバマ大統領(当時)がSTEM教育を国の優先課題と位置付け、「ゲームより面白い教材を子どもらに」と訴えました。

 鍵となるのはヒトならではの「発想力」「創造力」「表現力」「論理的思考力」「問題解決力」です。

 これまでのように教師が教科別に児童・生徒に教える講義型の授業だけでは十分とはいえません。教科横断的、多元的に自ら学ぶ力を育て、友達などほかの人と協力して正解のない問題を解決していく能力を育む必要性があるからです。

 具体例をご紹介します。東京都武蔵野市の聖徳学園の取り組みです。

◇中学校の授業の例

クレイアニメをつくる授業

 中学1年生が粘土とタブレット端末を使って、クレイアニメ(粘土を少しずつ動かしてつくるアニメ)を作製しています。テーマは国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)。STEMを基盤としながらも、美術と連携してより創造性の高い授業となっています。

◇高校の授業の例

プログラミングの授業で、ゲーム形式でプログラミングを学ぶのに使われるタブレット端末

 高校1年生によるプログラミングの授業です。生徒がお互いに学んでいます。STEM・STEAMともに教師からの講義は最小限で、質問に答えるなど学びの支援が中心となっています。

プログラミングの授業では生徒がお互いに学び、教師はサポート役に

政府もSTEAM推進 

 「骨太の方針2019」では大学改革の項目で、教育再生実行会議の第11次提言(2019年5月)で初等中等教育でのSTEAM教育の充実、推進が明記されています。

 2020年4月から、小学校でSTEM・STEAM教育の一種であるプログラミングが必修になります。ただ、自治体によってICT機器の導入や教員の研修などにばらつきがあるのが課題となっています。

家庭でできることは? 

 家事の段取りを考えるのもプログラミングの一つです。聖徳学園の品田健学校改革本部長は「特に料理は盛り付けやテーブルセッティングを含め、アートの要素があり、STEAM教育にぴったりです」と説明します。

学びの効率を上げるためのキーワード

STEAMに関連して、次のようなキーワードがあります。

◇アクティブラーニング

 自学自習、生徒同士の協働による学びあい。従来の「一律・一斉・一方型授業」により、学びの定着率が高いとされています。

◇EdTech

 21世紀の学習教材、文具としてのICTの活用。個人の学習状況を把握しておのおのにあった学習計画を立てるのに役立つ「アダプティブラーニング」など、一人も取り残さず、多様な学びを提供するのが目的です。

 ICT機器の取り扱いはゲーム依存症の問題などに細心の注意が必要です。しかし、最適な情報を得たり、事務作業を効率化したり、学ぶ側にとっても、教える側にとっても役立てることができます。これからの学びでは、紙や鉛筆と併用してICT機器も使いこなすことが鍵になりそうです。

コメント

  • 自然生態系のある場所としての環境を通して、園や小学校に関わっています。 現場で見る学びの環境が、世界の変化についていけない理由を探すとき、この記事によって整理されてたと感じました。
     
  • ビジュアル的にも非常にわかりやすくて、VERY GOOD!