〈奥山佳恵さんの子育て日記〉16・君ならきっとできるよ! ダウン症の次男が「はじめての下校」に挑戦

(2020年10月30日付 東京新聞朝刊)

奥山佳恵さんの子育て日記

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傘はなぜか横にさす派の息子。その登下校は、そりゃあみんなが心配です

登下校の付き添いが日常だったけれど

 キッカケは、ギックリ腰でした。

 ダウン症のある小学3年生の次男、美良生(みらい)は現在、先生方やお友達、多くの方のサポートを受けながら、地域の小学校の通常学級に在籍しています。入学前から「通級するために必要な工夫は何か」と知恵を出し合う面談の席を設けていただき、スタート時から留意していたのが、登下校の配慮でした。

 学校が第一に考慮してくださるのは「安全面」。私たちももちろん、1人で外を歩いたこともない息子をいきなり「いってらっしゃい」とは送り出せません。登校の付き添いは、美良生を愛する夫が喜々として担当し、下校は私。それは当たり前の日常となりました。すっかり定着したこのリズムに異変が起きたのは、この秋のこと。夫が突然、ギックリ腰になったのです。

「行けない」決めつけていただけかも

 「う、動けない」。イレギュラーな出来事に戸惑ったのは美良生。実は、これまで美良生のペースを重んじて学校へ向かっていたため、遅刻がちに。「何とかしないとね」と考えていたところ、急きょ私の担当になったわけで。加えてその日に限って、美良生は日直当番! 急がないと!

 美良生を急(せ)かし、並走してダッシュ。なんだ、行けるじゃないか。やってみて、促して思った。行ける。美良生は1人でも学校に行ける。私たち大人が「行けない」と決めつけていただけではないだろうか。入学以来、初めての気づきでした。

 確信を得たかったので、下校時、今まで当然のように教室を出た時から家までつないでいた手を、あえて初めからつながず、その代わりまっすぐ目を見て笑顔で言ってみた。「美良生、1人で帰っておいで」。美良生ならきっともう、できるよ。

後ろから見守る「距離」を長くして…

 それを受け、「わかった」と1人で歩き出したのは息子。言えばできた。やってみたらできた。それでも心配なので距離を保って後ろから付いて行く。付いてきているのが見られないように。後追いして見守る私の姿に、同級生たちに「はじめてのおつかいみたいだね」と笑われる。それ、あながち間違ってないよ、今、彼は「はじめての下校」にチャレンジ中なんだから!

 学校側と相談し、今後は次の段階として、後ろにいる「距離」をさらに長くすることにしました。1人で下校して、ただいまと帰ってくる日まではもうすぐ! ドアで「おかえり」と迎えた瞬間を想像しただけで、今から私は涙目です。(女優・タレント)

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なるほど!

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グッときた

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もやもや...

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知りたい

すくすくボイス

  • 匿名 says:

    通常学級を選択した親の気持ち、痛いほど良く分かります。
    今、私の娘は中学1年 この春から通常学級を選びました。小学6年間は学区の支援級でした。支援級を選んで良かったこと。
    今の通常学級で良かったこと そうでもなかったこと、考え共有したいです🌹

      
  • 匿名 says:

    うちの息子もダウン症です。
    今、普通学級に通ってます。
    小学一年生です。
    だからと言って何でもできるわけでもなく、社会性を身につけて欲しいと思い普通級に決めました。
    やはり登下校は親が一緒です。
    学校の先生、お友達、地域の方々のおかげで楽しく過ごしています。
    通学路は覚えていますが、交差点の車、自転車等危ないと思うことはあります。
    私も少し離れて見ています。
    いつか、1人で「ただいま」と帰ってくることを思うと本当に涙が出そうです。
    私は息子がダウン症だとわかってから、色んな事を息子から教えてもらいました。
    全てが当たり前ではないということが1番です。
    これからも私達家族の生活は学びでいっぱいです。
    ダウン症だけでなく、すべての子供達一人一人の特性が個性だと受け入れてもらえる世の中になって欲しいと常々思ってます!

      
  • 匿名 says:

    子供は無限の可能性を秘めている…
    それに蓋をしているのは大人なのかも…
    遠くから見守り頑張れる言葉をかける
    いつでもパパもママもここで待ってるよ!
    とても良いお話読ませて頂けました。
    ありがとうございました❤︎

      
  • 匿名 says:

    子どもの成長・発達は環境に大きく影響するものです。素敵な環境(人的・社会的)ですね。逞しく育っていくのが、目に浮かびます。日常生活の中に幸せを運んでくれますね。勇気と嬉しさを頂きありがとうございます。

      
  • 匿名 says:

    うちは自閉症で小学2年生から特別支援でした。学校が目の前でも心配でした。毎日ひとりで帰宅出来るかな❔と。ちょっとずつその子のペースに合わせて進み今は立派に25才になり、ちょっとずつ前に進んでいます。

      

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