「ネットやゲームのしすぎ」と「子どものイライラ」の関連性 自分から変わるため、保護者は何ができるか
毎日2時間なら年間の授業時間に匹敵
「インターネットの使い過ぎって、1日どのくらいだと思う?」。9月上旬、横浜市立山内小学校6年生の総合学習の時間に行われた情報モラルの授業。住岡さんの問いかけに、児童からは「1時間!」「えー、3時間くらい?」といった答えが返ってきました。
「1年間、毎日2時間使うと2時間×365日で730時間。小学校の年間の標準授業時間が45分×980コマで735時間。つまり、ほぼ同じ時間です」。住岡さんの説明に、「やばいじゃん!」「授業よりゲームしてる方がずっと長い…」と教室にどよめきが上がりました。
住岡さんは、「使い過ぎ」の目安について、「1日2時間以上だからだめ、ということではない」と指摘。「授業時間という子どもたちがイメージしやすい材料と比較することで、時間の重みを感じてもらい、『宿題が終わったから、○分間ゲームをしよう』などと、主体的に決められるようにしたいのです」と授業の狙いを解説します。
怒りっぽくなる→どうコントロール?
住岡さんは、ゲームやネットの使いすぎによる影響も子どもたちに伝えます。「怒りっぽくなる」「目が痛くなる」「朝起きられなくなる」などさまざまな影響がありますが、特に「怒り」という負の感情をどうコントロールするかに焦点を当てて、子どもたちに考えさせます。
使ったのは、YouTubeを見ていたパンダの子どもがお母さんにスマートフォンを取り上げられてイライラする様子の動画。「なぜ怒っているんだろう?」。子どもたちにも考えてもらいながら、イライラする気持ちは、大切なものが奪われそうになったり、攻撃された時に感じる「心の痛覚」であることを解説していきます。そして、すぐできる気晴らし方法として「6秒数える」「その場を離れる」など怒りをコントロールする「アンガーマネジメント」の方法も紹介しました。
山内小の佐藤正淳(しょうじゅん)校長は「授業時間との比較のように、数的根拠を基にした説明は、児童の胸ににすとんと落ちたのではないか。アンガーマネジメントの考え方は、6年生にとっては初めてだったと思うが、自分を客観視し、修正するのは、これから生きていくのに必要なスキル」と授業内容を評価しています。
イライラするから、ネットに没入する
「子どものイライラと、デジタル端末の使用時間には関連性があるかもしれません」。教育ネットが5月から7月にかけて実施した保護者へのアンケート結果から、住岡さんはこう指摘します。
アンケートは首都圏を中心とした小中学校20校の保護者を対象に実施。睡眠時間は十分に取れているか、体を動かしているか、イライラしていることはあるかなど子どもの様子のほか、1日のゲームやネット動画を見る時間数などを回答してもらいました。
その結果、全体的な傾向として、コロナ休校中の5月は、ネットやゲームを使う時間について「だんだん長くなっている」「ルールを決めても守らない」という回答が多く、それに伴って子どもがイライラしているといった回答も多かったとのこと。ですが、学校再開後の6月、7月にはいずれも徐々に減っていきました。
一方、「コロナ休校と関係なく、学年が上がるにつれ、使用時間やルールに関する保護者の困り事は増えます」と住岡さん。特に体も心も大きく成長する小学校高学年からの「前思春期」は、親に反発したり、イライラしやすくなったりする子も増える時期。「子どもによっては、イライラするから、ネットやゲームに没入する。ネットやゲームをやり過ぎることで、もっとイライラする子もいます。自分のデジタル機器の使い方とそのときの心や気持ちのありようがどう関連しているか、自分なりに振り返ってもらうことが大切です」
また、ゲームなどの強い光は交感神経を刺激し、熟睡を妨げるため、成長期の子どもたちの心身への影響は大人よりも深刻であることを保護者も知っておいてほしいと言います。
叱るだけでは、心を閉ざしてしまう
だからといって、頭ごなしに「ゲームなんてくだらない」「やり過ぎはだめ」と叱っても子どもは心を閉ざしてしまいます。「どういうところが面白いの?」と子どもから教わろうとする姿勢を見せたり、「私はこういう時にイライラするんだよね」と共感を示したりして、ゲームやインターネットを切り口に子どもと話し合うことを勧めます。
今の小学生は、生まれたときからスマホが身近にある「スマホネイティブ世代」。住岡さんは「家庭の中で、スマホやゲーム以外の楽しみを与えられているかどうかも考えてほしい」と話しています。
コメント