毎週金曜に「学校スト」 地球温暖化対策の強化を求め、抗議する若者たち

福岡範行 (2021年4月15日付 東京新聞朝刊)

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「62%」と書いたプラカードを手に温室効果ガス削減目標の大幅な引き上げを訴える学生ら=東京・霞が関で

 地球温暖化対策の強化を求める高校生や大学生らが4月初めから、毎週金曜に学校を休んで政府に抗議する「学校ストライキ」を続けている。政府は月内にも2030年の二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス排出の削減目標を「2013年度比45%減」を軸に引き上げる方針。これを受け、学生らは「62%」と書いたプラカードを掲げ、大幅な目標引き上げを迫っている。

45%は妥協したような数字

 62%は国際研究機関「クライメート・アクション・トラッカー」が3月、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の目標達成のために日本に求められる削減幅として指摘した数字だ。温室効果ガスを、2013年度の排出量から62%減らすことを意味する。

 政府の新たな目標は、現行の「2013年度比26%減」より高いが、研究機関の指摘に遠く及ばない。学生らは「目標が決まると、それより多い削減は見込みづらくなる」「妥協したような数字。あり得ない」と焦りをにじませる。

グラフ 温室効果ガスの排出量と政府の削減目標

私たちが成長する頃に深刻化するかもしれない

 9日に東京・霞が関の経済産業省前に立った大橋みらどさん(18)=東京都大田区=は、環境保護を意識したファッション企業の立ち上げを夢見て、海外留学を準備中だ。「会社を始めた時に手遅れの状況になっていたら意味がない。目標に向かって勉強できるような未来をつくってほしい」と訴えた。

 この日の夕方には、国会議事堂前の活動に小中学生も参加。埼玉県の中学2年生(13)は「私たちが成長する頃には気候危機は深刻化するかもしれません。未来を変えるには政治の力が必要です」と力を込めた。

「高い目標で好循環を」

 菅義偉首相は昨年10月、2050年に温室効果ガスの排出実質ゼロを宣言した。これを実現するために、企業や自治体、市民団体などでつくる「気候変動イニシアティブ」は政府に対し、削減幅を2013年比45%以上に引き上げるよう求めている。事務局の自然エネルギー財団(東京)の常務理事大野輝之さんは「62%減は本来あるべき姿。若者グループと思いは同じだ」と語る。

 気候変動イニシアティブは現実的に達成できる水準を検討し、「最初のステップ」として45%以上を目標に置いた。自然エネルギー財団や環境保護団体・世界自然保護基金(WWF)ジャパンの研究によると、この目標達成にも、CO2の排出が多い石炭火力発電所は30年度までにほぼゼロに近づける必要がある。

 政府が「2013年度比45%減」に目標を引き上げるならば、現状の石炭火力発電所を維持する方針は大幅転換が必要だ。大野さんは「45%は最低限。より高い目標への出発点にして、企業などと政府が互いに高め合う好循環をつくらないといけない」と強調した。学校ストライキの発起人で東京都調布市の高校3年山本大貴さん(17)は「学校を休むことには賛否があると思う。削減目標の在り方と一緒に議論してほしい」と呼び掛けた。学生たちは16日も昼に経産省前、夕方には国会前に立つ。

学校ストライキとは

 学校を休み、地球温暖化の対策強化を訴える取り組み。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(18)が2018年8月に1人で国会議事堂前に座り込んだことが話題になり、共感した若者らによる「Fridays For Futuer(未来のための金曜日)」の活動の世界的な拡大につながった。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年4月9日

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