子どものモヤモヤ聞いてみた 「いじめから助けて」「遊び場がない」「家族の介護で勉強できない」 大人は何ができるのか

柏崎智子、奥野斐、青木孝行 (2022年5月5日付 東京新聞朝刊)
 いじめに遭ったり、家族の介護で勉強できなかったりしている子どもたちは、社会や大人にどんなことを望んでいるのか。自由に過ごせる場所が少ないことを、子どもたちはどう感じているのか。それぞれの思いを聴いた。

先生に「やり返す方も悪い」と言われて

男子生徒がいじめられていた時の悲しい気持ちを、好きなゲームキャラクターに託して描いた絵

 小学生の時にいじめを受けた中学1年の男子生徒(12)=東京都=は「大人に相談しても取り合ってもらえず、ずっとあきらめていた」と振り返る。いじめを訴える子どもを特別な目で見て同情するのではなく、「具体的に動いて助けてほしい」と要望している。

 男子生徒は小学校に入学して間もない時期から、友達に殴られていたが、「なかなかいじめと自覚できなかった」。殴った翌日には仲良くしてくるなど、その子たちの気分次第なので、学校ではいつも安心できなかった。担任の先生に相談したが、相手の腕を振り払ったことを「やり返す方も悪い」ととがめられ、あきらめた。6年生の秋、学校へ行けなくなった。

 母親は学校と何度も話し合ったが、反応は鈍く、NPO法人「プロテクトチルドレン」(埼玉県川口市)の森田志歩代表に助けを求めた。森田さんが間に入ると、学校は調査を約束したが、学級アンケートで誰も暴力を認めず、担任から「指導できない」と伝えられた。男子生徒は「心に泥がたまっていくようだった」と振り返る。

 森田さんの「自分の気持ちを伝えて相手に考えさせる方法もある」という助言を受け、男子生徒は手紙を書いた。小学校の卒業式の日、担任の先生にクラスで読み上げてもらうと、その日のうちに友達の一人が自宅を訪れ「暴力ふるってごめんね」と謝ってくれた。本心から反省しているのが伝わり「うれしかった」という。

 先生がなかなかいじめに向き合わなかった理由について今、こう考える。「先生もどうすればいいか分からず、自分にとって悪いことが起こると考えたのではないか。一人で抱えず、いろんな人に相談すれば不安を乗り越えられたと思う。良い方向へ進むように動いてほしい」(柏崎智子)

主体性が引き出される「第三の居場所」

駄菓子屋の屋台づくりに取り組む中学生=東京都杉並区で

 空き店舗を改装した地域のスペース「まちナカ・コミュニティ 西荻みなみ」(東京都杉並区)では、2019年から子どもが自由に過ごせる時間を設けた。地域に今、子どもたちが自由に遊べる場所は少ない。ここは子どもにとって家でも学校でもない「第三の居場所」になっているという。利用する男子の一人は「自分たちが決めて、大人たちが協力してくれるから居心地がいい」と話す。

 西荻みなみでは放課後、子どもたちが読書をしたり、工作をしたりしている。商店が並ぶ通りで毎月開かれる朝市では、子どもたちが駄菓子を売る活動にも取り組んでいたが、コロナ禍の今は、再開後に備えて屋台をつくっている。

 子どもたちの活動を支援するスタッフは、できるだけ子どもの主体性を引き出すように心掛けているという。総括プロデューサーの秋山成子(ふさこ)さん(52)は「親でも友達でもない、地域の大人が見守るナナメの関係性を築けたら」と語る。

 4月中旬の日曜日、小中学生5人が黙々と屋台づくりの作業をしていた。この日は午前10時から休憩を挟んで夕方まで取り組み、屋台2台に棚板や屋根を取り付けた。

 屋台の絵を描くところから始め、設計図も描いた。外部講師に道具の扱い方を習って木材を切り、組み立てる。「ここは自分たちの意見を大事にしてくれる」と中学2年の男子生徒(13)が話すと、ここで知り合ったという同い年の男子もうなずく。「楽しいっすよ」と別の男子が笑う。

 男子生徒は「学校では先生に友達関係にまで口出しされる」といい、理不尽と思うことも多いという。大人たちが話をしていると、休憩していたこの生徒が「よし、やろう」と再び屋台づくりに立ち上がった。「やるか」と応えた男子は、おもむろにやすりをかけ始めた。(奥野斐)

欠席が多いヤングケアラーに配慮して

祖父の身の回りの世話について話す女子生徒=東京都内で

 認知症で車いす生活となった80代の祖父を日常的に介護する「ヤングケアラー」の高校3年の女子生徒(17)=東京都内在住=は、大学進学を希望している。「家庭の事情に応じて、学校が宿題の提出時期を柔軟に変えたり、進級するための出席日数を考慮したりできるようにしてほしい」と求めている。

 女子生徒は昨年6月以降、自営業の仕事で忙しい、ひとり親の母親=50代=と交代で介護にあたる。家事の手伝いもあり、心身ともに疲れ、高校は欠席が多くなり、3年の進級時は留年ぎりぎりだった。「勉強時間がつくれない。やりたいこともできない」と焦ったり、将来の不安が頭をよぎったりするという。

 女子生徒は、別の高校に通う妹を加えた4人家族。認知症前の祖父は、旅行に連れていってくれたり、運動会を見に来てくれたりと「お父さんのような存在だった」。しかし、5年前に発症、約1年前に車いす生活になり、つきっきりの介護が必要になった。

 以前は祖父が夜中に起きることも多く、一時は睡眠が取りづらかった。高校から帰宅すると、トイレに行く祖父の体を抱えたり、話し相手になったりする。同じ話を繰り返し聞くことが多く、「気が重いと思う時もある」と話す。

 高校の担任教諭は気づかってくれるが、友人には事情を伝えづらい。介護生活が始まる直前、母親がテレビで認定NPO法人カタリバ(杉並区)の存在を知り、親子でカタリバの支援プログラムに参加した。

 カタリバのヤングケアラー支援事業担当の和田果樹(みき)さん(31)は「『子どもに介護させるのか』という批判もあるが、介護制度は複雑で使いこなせずに家族が背負う場合も多い」と状況を理解し、対応している。女子生徒は「私の話を否定しないで聞いてくれる」と信頼を寄せる。(青木孝行)

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年5月5日

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