参院選に問う「困窮するひとり親家庭でも、安心して大学に行かせてほしい」 奨学金を打ち切られた学生の苦悩
母が解雇 アルバイト漬けになり留年
兵庫県出身で、ひとり親家庭に育った。母親(53)は昨年3月、コロナ禍で売り上げが急激に落ち込んだ冠婚葬祭関連の会社を突然、解雇された。正社員で約200万円あった年収は消え、家計は苦しくなった。
男性は日本学生支援機構の給付型奨学金を受け、昨年4月に入学。入学金や授業料の一部に加え、生活費に使える月7万5000円余りの奨学金を支給されたが、完全には賄えなかった。「母に負担はかけられない」とアルバイト漬けの日々が始まった。
平日は大学の講義後にコンビニで夜まで勤務。週末も飲食店で朝から夕方まで働いた。10万円以上稼いだ月もあったが、下宿代や食費に消えていった。勉強が追い付かず、試験の直前だけバイトを休んで対策に励んだが、そんな生活に限界が訪れた。
今年1月に受けた期末試験で必修科目の2単位を取りこぼし、3月に「留年」の通知が大学から届いた。自身がコロナに感染して勉強が十分にできなかったこともあり、追試を受けられないか掛け合ったが、「決定は覆せない」と言われ、断念。奨学金の規定には「留年した場合は『廃止』」とあり、5月に打ち切りを告げられた。
「事情を認めてもらえず、ショックだった」と男性。いったん休学して実家に戻り、今秋からの復学を目指して再び資金稼ぎのバイトに明け暮れている。
物価高が追い打ち 夢を諦めるのか
母親も再就職がままならず、バイトでしのぐ。ガソリン価格は今春から1リットル170円前後で推移し、車を使うのをやめた。自宅から4キロほど離れた勤め先には、大雨でも自転車で通う。価格が高騰しているタマネギなどは買わず、食費を切り詰めるため朝食を抜くこともある。ガソリンも食品も価格高騰の収束は見通せないが、「復学に向けて頑張る息子に負担をかけられない」と我慢を重ねる。
男性は「こんな状況が続けば、大学を卒業してコンピューター関連の仕事に就く夢も諦めざるを得なくなる」と声を落とす。参院選の投票日が迫る。投票先は決めていないが、政治には問いたい。「家庭環境にかかわらず、安心して大学教育を受けられる社会を実現してもらえないか」
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい
これまで先進国といわれてきた国で日本だけが大学に行くのも自己負担で、子どもに高等教育を受けさせるのが贅沢であるかのような扱いだ。
なんらかの事情で学費を賄えなかった家庭の子は、大卒よりも低賃金で搾取され、個性や能力も活かせずに社会の不平等を恨む事になる。そのような人の数が増えれば当然経済、社会は停滞する。国力の衰退は顕著で無視できないほどだ。
これまでも言い続けられてきた事だが、子どもを学校や家庭に従属させるものとして見るのをやめて、子どものリテラシーや能力を伸ばすために教育に投資する政策を立ててほしい。