「アイはあるの?」 中高生向けに埼大教授らが性教育本 26テーマを漫画とコラムで解説
出田阿生 (2022年7月13日付 東京新聞朝刊)
思春期の子どもが性を学ぶための本「マンガ アイはあるの? <性>について考えてみよう、話し合ってみよう!」を、埼玉大の田代美江子教授(ジェンダー教育学)らが出版した。「友達は多い方がいい?」「カレシ・カノジョがいないとダメ?」-。そんな疑問や悩みを、26項目のテーマに分けて解説。田代さんは「答えを押しつけるのではなく、この本を通して中高生が考えたり話し合ったりするきっかけになれば」と語る。
「自宅で2人きりになる」=「性行為OK」?
性教育の専門誌「季刊セクシュアリティ」に連載したコラムと漫画を1冊にまとめた。コラム部分は田代さんや仲間の研究者が、漫画部分を田代さんの知人で漫画家の塙(はなわ)季代子さんが担当した。タイトルの「アイ」は、英語の「I(私)」と「愛」の二重の意味を持たせた。一人一人が尊厳を持って生きていくためにどうすればいいか、性をキーワードに考える。
たとえば「親がいない時に自宅で2人きりになる」ことは性行為の同意を意味するのか。漫画には「普通に考えたらOKだよ」という男子生徒と、「彼女に直接聞くべきだ」と主張する別の男子生徒が登場。そこへ女子生徒が「OKなわけないじゃん。それとこれとは別だよ」と断言する。最後に「性行為の同意を確認することは難しいことだと思いますか?それはどうしてですか」と考える・話し合うポイントを提示する。
「自慰行為をし過ぎると…」 俗説も解説
「タンポンをつけると処女膜が破れる」「自慰行為をし過ぎると死ぬ」といった、虚偽の俗説についても解説した。性をタブー視することが誤った情報を流布させ、健康被害や性差別を引き起こす原因にもなる。
田代さんは「性教育とは、人権やジェンダー平等、多様性を認め合うための学び。説教くさくならないよう、深刻なテーマでもユーモアをまじえて前向きにとらえられるように工夫した。性をポジティブにとらえる社会を目指している」と話している。
エイデル研究所・1980円(税込み)。
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