高校の数学の宿題が多すぎる 「夜中まで解答丸写し、他の勉強ができない…」教育関係者が問題提起 背景には何が?
多すぎる、難しすぎる、やる意味がない
名城大教職センター教授の竹内英人さん(54)の呼び掛けで9月に開かれたオンライントークイベント「数学の宿題多すぎない?」には、全国の教員・塾講師や保護者ら約90人が参加。竹内さんのほか、この問題に関心を寄せる数学者と2人の塾講師が登壇し、意見を交わした。
高校時代の宿題について大学生から聞き取った神戸大大学院理学研究科教授の谷口隆さん(45)=代数学=は「多すぎる、難しすぎる、やる意味がないという3つの問題点が見えてきた」と指摘。他の科目に手が回らなくなるほどたくさんの課題や、解答を写すだけになるような難易度の高い問題、簡単に解ける大量の基本問題を出すことへの疑問を呈した。
「できない人がどんどんできなくなる」
東京都杉並区で「嚮心塾(きょうしんじゅく)」を開き、高校生から相談を受けることも多い柳原浩紀さん(46)は「進学重視の高校は一部を除いて軒並み宿題の量が多く、内容も吟味されていない。教科書レベルの問題が理解できない段階の生徒に入試レベルの問題を出しても力は付かない。親世代の頃とは比較にならない量が出されており、宿題に苦しみ、数学だけでなく学校まで嫌になってしまう子もいる」と訴えた。
実際に都内の高校生や卒業生の声を聞いてみた。元都立高生で浪人中の女性(19)は「高校時代は成績評価に縛られて課題提出に追われ、できない人がどんどんできなくなっていくシステムだった」と振り返る。「出された宿題を全部やるのではなく、自分で取捨選択することができていたら、数学を諦めずに済んだかもしれない」
学校間の進学競争激化 保護者の圧力も
ただ、教員側にも事情があるようだ。千葉県内の公立高に務める40代の数学教員は「成績を付ける際に、『主体的な学習態度』は本来、生徒の授業中の姿勢を評価したいが、40人を見るのは難しい。大部分を宿題への取り組み方で評価せざるを得ない」と打ち明ける。
愛知県立高の数学教員は「先生が指導したというアリバイ作りのためにやらせているケースもある」。柳原さんは「進学に力を入れる高校に生徒が集まるため、『難しいレベルの問題集を、これだけの量やらせている』という学校間の競争が起きやすい。先生だけが悪いわけではなく、こうした圧力が学校や保護者からあるのでは」と指摘する。
「自分で計画を立てる」で結果は出る
数学教員向けに研修も担当する竹内さんは「多すぎる宿題の弊害を認識しながらも、量を減らして生徒の成績を落とすことが怖くて踏み切れない教員は多い」と話す。
昨年度、竹内さんは数学指導アドバイザーを務めた公立高で「自ら計画を立て、必要な宿題をやる」という取り組みを実践。「やっと自分の勉強ができた」と喜ぶ生徒が多く、進学実績も上がったという。「生徒の勉強の意欲が高まったのが何より良かった。宿題を大量に出さなくても結果が出ると知ってほしい」
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