東京都スクールカウンセラーが大量の「雇い止め」 継続して働きたいのに2割超の250人が公募試験で不採用 都は基準を開示せず
学校の評価は高いのになぜ不合格?
スクールカウンセラーや心理職らでつくる労組「東京公務公共一般労働組合心理職一般支部(通称・心理職ユニオン)」(豊島区)は、1月下旬に合否が出てから相談を受けている。相談者数は5日までに73人に達した。
相談では「学校での評価が高く面接でも滞りなく受け答えをしたのに不合格になった」との声が多く寄せられた。そのため労組は基準の開示や、勤務実績を考慮せずに面接のみとした選考理由の説明を求め、2月末までに団体交渉を都教育委員会に3回申し入れた。
新規は783人のうち441人が合格
都教委や労組への取材によると、契約更新の上限に達して試験を受けた都スクールカウンセラーは1096人。不採用や、補欠に当たる「補充任用」として4月から採用されない人は22.8%の250人に上る。
新規での応募は783人のうち441人が合格し、更新上限に達しないため公募試験を受けずに契約を更新したのは420人だった。労組によると都教委は採用基準の資料開示要請などに応じていない。
「部品を交換するような…理不尽」
雇い止めに遭った都スクールカウンセラー4人と採用者1人は5日、都議会を訪れて採用基準の開示や更新上限の撤廃、雇い止めの撤回を求める要請書とオンラインで集めた4856筆の署名を東京都教育庁の石毛朋充勤労課長らに手渡した。石毛氏は「団体交渉の申し入れは法令に基づいて対応したい」と述べた。
5日に都内で会見した都スクールカウンセラーは「部品を外して新しいのと換えるような理不尽な雇い止めを行政が率先している」と批判。東京公務公共一般労働組合の原田仁希氏は「これだけ一気に非正規公務員の雇い止めが起きたのはおそらく全国初ではないか」と述べた。
スクールカウンセラーとは
悩みを抱える児童生徒やその保護者、教職員らに助言する専門職で、臨床心理士や公認心理師といった資格が求められる。東京都では、公立の小中学校と高校全2068校のほか、都立特別支援学校の13校に計1565人の都スクールカウンセラーを配置(2023年度)。1人が複数校を担当する場合もある。勤務日数は1校につき年間38日。平均週1回で日当は4万4100円(2023年度)。定期的に公募をかけて採用する理由を都教育庁職員課は「公務の職に広く市民が就けるようにする平等取り扱いの原則と、試験で選考する成績主義を踏まえるため」と説明する。
東京都スクールカウンセラーの雇用(任用)の仕組み
全員が非正規の公務員。契約を1年ごとに区切る新しい人事制度(会計年度任用職員制度)が2020年度に全国で導入され、それ以前から契約を毎年更新していた人は、2023年度に都教育委員会の定める契約更新の上限に達する。2024年度も働くためには公募試験に受からなくてはならなくなった。
20年以上のベテランが…嘆く校長「評価はA。続けてほしいのに、なぜ」
都は「雇用機会公平性の確保」と答弁
遠藤さんは都立高校1校と区立小学校2校を2023年度は担当する。勤務実績が評価されたから20年以上契約を毎年更新し、複数校を任されたと思っていた。
当初は「学校側は私に辞めてほしかったのか」と自分を責めた。だが、校長から「評価をAで出した。続けてほしいのになぜこのようなことが起きるのか。困る」と言われ、現場に求められていたと知った。「遠藤さんだから言えたことがいっぱいある」と動揺して泣く保護者もいた。
大規模な雇い止めが起きていることを知ったのは、1~2月に労働組合が都スクールカウンセラーに実施した2024年度の採用状況を聞くアンケートがきっかけだった。「年齢で切られたかと思ったが、次世代を担う働き盛りの人も切られていた。若い世代が安心して働けない。人生設計もできない」と話す。
労組に加入し2月26日の都教育委員会との団体交渉で、出席した都教委職員の名字を呼んで思いを訴えた。組織として決めたため雇い止めは問題ないとする都教委の姿勢が人ごとのようで、「あなたたち一人一人が私たちの人生を決め、破壊した」との責任を感じてほしかったからだ。
別の都スクールカウンセラーも5日、遠藤さんと同じく割り切れぬ思いを吐露した。2月の都議会で浜佳葉子教育長が公募する理由を「雇用機会公平性の確保」と答弁した点について、「都スクールカウンセラーの雇用の機会を設けるメリットと、250人の雇い止めされたスクールカウンセラーを頼っている何百人の子どもと保護者への影響を比べて考えてほしい。雇い止めは切実な相談ニーズをないがしろにする判断だ」と話した。
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教員です。学校で評価され、求められているのに交代させられたとしたら、相談者や家族は自分の困り感をまた一から説明し、分かってもらう努力をやり直さねばなりません。仲間内でもscの雇い止めは問題視しています。何か隠された理由で規則ができているのでは?と疑念を持ちます。
雇い止めになったスクールカウンセラーです。16年間、勤めてまいりました。現在2校に勤務していますが、残りの出勤はそれぞれ1回、2回。そこで、子ども達にさようならを言わなければなりません。
なんとか不登校の相談室にだけは来られるようになった子ども、何年もかけて信頼関係を築いてきた発達障害の子ども。他の支援にはつながっていない子もいます。
なんらかの辛い経験の中で、他者との信頼関係が揺らいでいる子ども達も、います。家族や友達などの大切な人との、辛い別れを経験していることもあります。
でも、強い不安や苦しみの中で、なんとか自分の課題を乗り越えようと、相談室にてくれた子ども達もいます。
カウンセリングの基本として、信頼関係を築くことと同様に、お別れ(終結)の仕方も、とても大事なものです。上述のような心が繊細な状態になっている子ども達にとって、信頼していた人との急な別れがどのような影響をするのかは、想像に難くないと思います。
信頼していただけに、その別れによってさらに傷が深まることもあります。そして、そういう状態になった人が、次に支援を求める気持ちになれるには、どれくらい時間が必要でしょうか。たとえ、新しいカウンセラーが来たとして、すぐに信頼する気持ちになれるでしょうか。
雇用の機会の公正さ、と言いますが、それは相談に来ている人たちにどんな関係があるのでしょうか。誰のためのスクールカウンセラーなのでしょうか。
スクールカウンセラー本人だけでなく、それぞれのスクールカウンセラーを信頼していた何百人の人を傷つけてまで、行うほど必要が本当にあったのか、他に方法はなかったのか、と心から疑問に思います。
ここからは私事になりますが、私はいわゆる就職氷河期世代でした。ならば、非常勤でもやりたい仕事を、と思いました。収入が安定したのは30代半ば、遅めの結婚をし、現在子育て中です。(これはカウンセラーという非常勤の多い仕事を選んだ自分だけではなく、周囲の多くの友達も同様です。)
近居の高齢の両親は要支援、要介護状態、子どもは小学生と保育園児、のダブルケア状態です。そんな中の雇い止めです。
公平とは、どういう状態を指すのか、本当に公平なことなのか、納得できる答えはまだまだ見つからなさそうです。
元スクールカウンセラーです。
雇い止めにあった方々のお気持ちは察するところあまりありますが、単年度で担当が変わるのは教員のみなさまも同じですし、そもそも会計年度任用の扱いになっているのはスクールカウンセラーだけではありません。そして誰も触れていませんが、ほかの会計年度任用の方と比べるとスクールカウンセラーの待遇はずば抜けて高いです。
都のコメントにある「雇用機会公平性の確保」は世間の流れを考えるとさほどおかしな回答ではないでしょう。若手が参入しづらくなるデメリットもあります。利用される方にとっては不利益を及ぼすこともあるので難しいところですね。
また、3月も中旬にかかろうとするタイミングで雇い止め撤回するとなると、人員配置を担っている公務員の方がおそろしく増えることは言うまでもありません。
そもそも雇い止め撤回したら新規採用になった方の扱いはどうなるのでしょう。今から来期の予算を増やさなければ、雇い止め撤回をするとスクールカウンセラーは増員することになりますので、そのお金はどこから捻出するのか。
このように考えると全面的にこの訴えに賛同するのは難しいですが、採用基準の明確化、契約されない場合の早期の通知あたりが現実的な折り合いの付け方と思います。
また、こういった雇い止めはスクールカウンセラーだけの話ではないので、会計年度任用職全体として訴えかけていくのが適切だと思います。
今回、雇い止めになった者です。私はスクールカウンセラーとして10年以上キャリアがあり、現場の先生方や管理職、もちろん生徒や保護者から信頼を得て仕事をしてきた自負があります。
今回の件を管理職に伝えたら大変驚かれ、管理職は評価していたのにこの結果がわからないと教育庁に連絡をしてくれましたが、面接の結果だと返され、管理職としても、なす術がないと謝られました。
共に働いていた先生方はパニックで、これまでサポートしてくれた生徒はどうしたら良いかと大変困っていました。同時に教育庁の現場をまったく無視したこの対応に疑問と憤りを述べていました。また、いつもこうなんだよね、という落胆の声も漏れてきました。
学校現場では入学から卒業まで継続して関わる必要のある生徒も多いです。こころの問題を支えるには信頼関係というものがとても重要になってきます。つまり、専門家だからといって代替可能かというと、仕事(作業)としては可能ですが、子供たち個人、保護者個人といった相談者目線からしたら全く代替不可能なのです。
自分の胸の内を話すとき、誰でも、その相手が信頼できるか安心できるかと見極めてるはずです。ただカウンセラーだから、話せるわけではないと思います。そこで関係を作って初めて心を支えられるのです。
例えば、死を選択しそうになった生徒が教室には行けず相談室にだけ登校しているとします。その生徒は相談室を安全基地として新学期から教室に行くつもりでいたのに、その相談室のカウンセラーが新学期から初見のカウンセラーに替わったら、カウンセラーとの関係性は0から作らなければならず、その生徒にとっては教室に行くどころではありません。
もちろんカウンセラーは次のカウンセラーに申し送り等はしますが、上述したように、人の心を支えるとは、そういう問題ではないのです。その生徒はきっと、梯子がなくなった…、一から私のことを話さないといけないのか、あの辛いことを…、となってしまうのではないかと思います。もちろん、専門家としてそうならないように配慮しますが、なかなか対応に限界があると言わざるを得ません。安全基地がなくなってその生徒が通学できるかは難しいところがあると思います。
このような事例を様々な学校で、今回生み出している採用試験、雇い止め問題だということを、皆さん…特にこの採用試験に問題がないと主張している教育庁に知っていただきたいです。
長文乱文失礼いたしました。
このような不安定雇用は、お互いにとってとても「損」だと思います。正規職員で足りないところを補う訳でなくスクールカウンセラーは「専門職」です。子どもたちの未来ややる気を大切にしてくれる親でも教員でもない関係はとても大切です。東京都はそう思っていないと言うことの証明ではないでしょうか?それって子ども真ん中ではないと思うのですが都庁の皆さんはどうお考えですか?
経験のないカウンセラーが学校に入職すると、学校現場に馴染むことに時間がかかります。
例えば、4月は身体計測関連で養護教諭との連携は難しい、運動会は学校によって開催時期が違う、等…学校行事に合わせた教員の忙しさがあり、効果的な連携にはその把握が必須です。
自分が校務分掌のどこに位置し、いじめ防止対策委員会や校内委員会はどんなメンバーで構成され実行されているか、特別支援教育の流れはどうなっているか。そうした確認事項は資格養成過程では教えられず、学校現場を知らないカウンセラーなら、自分からそれをどう確認すると良いのかすら手探りで、更にそれぞれの学校文化は異なり、それに馴染まなくてはならない。
学校側からすると「このカウンセラーはどこまで学校のことを知っているか分からない」ところから始まり、激務の中で教える時間を捻出するのは苦しい。新しいスクールカウンセラーは配置されて機能するまでに数ヶ月はかかり、その間、3月までなんとか相談に来ていた児童・生徒・保護者への支援が途切れてしまいます。
子どもたちの中には、放っておかれたように感じ、やわらかな子どものこころは「もう相談できないんだ」と思って相談を辞めてしまう危険性すらあります。教員にも、児童・生徒・保護者にも、カウンセラーにも、良いことがない。
学校の中での相談は、相談室にカウンセラーがいるから行ってみよう。アドバイスをくれた。悩みがスッキリした!というものとはだいぶ違います。だって学校は暮らしの場だから。たいていの場合、暮らしも相談も続いていくんです。単発じゃないんです。
それから。
みなさんは、スクールカウンセラーに相談するときに、その相手が“スクールカウンセラー”だから相談しよう、と思われるでしょうか。相手がどんな人なのか、話ができる人なのか、思いをわかってもらえるか、そこを見極めようと思われるのではないでしょうか。
相談を受けるのは「立場」ではないんです。人です。人と人との信頼関係の中に相談が成り立ちます。
突然の雇い止めと人が変わることで、相談を「続ける」ことにどんな影響が出るか、想像できるのではないでしょうか…。
どうか都教委には想像してほしいです。
いったいどれだけの“続いてきた、続いていく”相談があるのか。ひとりのSCと関係を作ってきた子どもたちが、ご家庭がどれだけあるのか。積み重ねた時間の重みの意味はなんなのか。
このような雇い止めのニュースは悲しいです。特にスクールカウンセラーは、子どもと保護者との絆を作るのに何年もかけてきているのに。なぜ雇い止めをする必要があるのか。このような理不尽な人事はやめて欲しい。
私は元教員。生徒のカウンセリングは継続の案件も多いので、担当者が(本人の意向で無く)替わるのは辛い。また個々のカウンセラー(の個性)に合わせるまでに時間がかかるのでその意味でも好ましくない(勿論カウンセラーの方も学校に馴染んで貰わなくてはならない)。引き継ぎも上手くいくとは限らない。
現場からすると以上のような不都合が生じるし、カウンセラーで食べているご本人達も仕事に対する誇りが保てないのではないだろうか。雇用の流動は世の流れとは言え(転職できないのはダメ人間、みたいな風潮を憂慮)、頭の痛い問題である。「腰を落ち着けないとできない仕事がある」と都の人事責任者には申し上げたい。