<子どもの身を守る㊤>不審者の声掛けが巧妙化… 良心につけ込む悪質な手口も
「早く行かないと、お母さんが死んでしまうよ」
不審者事案で最も目立つのが、子どもへの声掛けだ。「おやつをあげる」「遊園地に連れて行ってあげる」といった昔からの手口なら、子どもも「ついて行ってはいけない」と判断しやすいものの、最近は声の掛け方が巧妙化している。
「おなかが痛いから病院に連れて行って」「なくした財布を一緒に捜してほしい」などと困っているふりをして、子どもの良心につけ込む手口がある。中には「おじさんはお母さんの友達だが、お母さんが事故に遭った」などと子どもをパニックにさせて、「早く病院に行かないと死んでしまうよ」とせき立てる事案もある。
こうした悪質な声掛けに、どう対処したらよいか。子どもの安全に関する研究に取り組むセコムIS研究所(東京都三鷹市)主務研究員の舟生岳夫さん(49)は「『おいで』『行こう』などと誘うような声掛けには気を付けて」と呼び掛ける。例えば、道に迷ったという場合、「行き方を教えて」ではなく「一緒に来て」などと言われたら、応じてはいけない。もちろん、どのように誘われても車には乗ってはいけない。
「おやつをあげる」のように関心を引く手口はいまもある。ただ、「かわいい子犬が生まれたけど、見に来ない?」や「すごいゲームがあるよ」と、より具体的に興味を引くように誘いかけてくる。女の子に「雑誌のモデルにならない?」と声を掛けることもある。
持ち物の記名に注意、名前を呼ばれるかも
持ち物への配慮も必要だ。傘などに目立つように名前が書いてあると、不審者が名前を呼んで声を掛けてくるかもしれない。名前を呼ばれると、子どもは「知っている人かも」と思ってしまい、リスクが高まりかねない。キャラクターグッズを身に着けているのも、不審者に何が好きなのかという情報を与えてしまう。
子どもの意識を高めるには、例えば近所で不審者が出没したら、「あそこは人通りが少ないよね」などと話し合う。子どもが犯罪に巻き込まれたニュースを話題にする。そうしたやりとりの蓄積で、子どもの危険を避けようとする力が養われていくという。
「あそこの道は暗くて怖い」など、子どもが不安や危険を訴えたら、「よく気が付いたね」とほめてあげるといい。「子どもが『変だな』『怖いな』と思う感覚はとても大事。親はしっかりと向き合ってほしい」と舟生さんは言う。
声掛けが多いのは<15~17時台/路上/1人だけ>
千葉県警は13歳未満の子どもに声を掛けたり、つきまとったりした昨年の県内の不審者情報約1200件を分析した。
その結果、下校中や帰宅後に遊びに出掛ける時間帯に当たる午後3~5時台に6割が発生していた。
場所は路上が7割で、公園内、団地やマンションの敷地内も多い。行為別では「声掛け」が4割と最も多く「つきまとい」「露出」が続いた。子どもの性別は女子が7割。1人でいるときの被害が7割だった。
また、愛知県警が2016年、子どもへの声掛けなどで取り調べた人物に聞き取ったところ、「子どもにどのくらい逃げられたらあきらめるか」では「すぐあきらめる」が7割、「10メートル以内」が2割だった。犯行前の下見は9割が「しない」と答えた。
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