「地元の友達と進学したい」思い実らず 文京区の区立中、来春の特別支援学級設置見送り
保護者らの請願は区議会で採択されたが…
文京区では、全区立中10校のうち3校に支援級がある。根津・千駄木地域の中学校にはなく、昨年2月、設置を求める請願を保護者らが区議会に提出。採択されたが今春の進学対象者はないとして、開設されなかった。来春は希望する6年生が少なくとも2人いる。区教委は今夏、汐見小(千駄木)に通う4~6年の障害のある児童15人を対象に、保護者に聞き取りを実施。10人が地域の支援級に通いたいと回答したが、区教委は来春は開設しないとした。
教育指導課は「生徒や教員数を確保し、人間関係を育む環境を整えるため、各校に支援級を最低2学級設けることが理想。支援級の生徒数は10年ほど変わらず、学校を増やすと2学級が維持できない」と理由を説明する。一方で、来年度から1学級体制となる学校もある。
都教委によると本年度、都内の公立校で支援級を設置しているのは小学校の約3割、中学校の約5割。担当者は「区市町村の判断による」とする。横浜市のように全公立小中学校に支援級を置く自治体もある。障害児教育に詳しい三重大教育学部の栗田季佳(ときか)准教授は「要望がありながら開設しないケースは、障害者基本法の原則に従うと、支援級の設置を検討する責務を果たしていない可能性もある」と指摘する。
「一緒に生きるとはこういうことだと、教わった」
「友達がいる中学校へ行きたい」。ダウン症、身体障害がある汐見小6年の天野堯(ぎょう)君(12)は声を振り絞った。9月にひざの手術をしたばかりで車いす生活を送る。
学校では、みなが自然と車いすを押し、話し掛ける。普通級、支援級に関係なく、毎日顔を合わせてきた仲間たちだ。
「一緒に生きるとはこういうことだと、子どもたちから教わった」と母の佳世さん(41)。地元の中学校に支援級がなければ、他の支援級への道も考えたというが、「友達が近くにいれば生活も、歩む道も変わる」と、涙ながらに訴える。
移動の負担もある。千駄木に住む山野順一朗さん(51)の中学3年の娘は発達障害があり、バスを乗り継ぎ1時間近くかけて遠い支援級に通う。慣れて1人で通学するまで、入学から3カ月かかった。区は月に10回までヘルパーの付き添い費用を支援するが、「人手不足で、当日まで利用できるか分からないことも」と、山野さんは実情を話す。
汐見小5年生の障害のある息子を持つ富岡智子さん(44)は「通わせるのが大変だと、(中学校は)普通級を選択することもできるが、授業内容が分からず座っているだけになってしまう」と危惧する。送迎のため仕事を辞めるしかないと思い詰める親もいるという。
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