「多摩川を渡ったとたん、子育て支援に差が」 川崎市の学校給食値上げ検討で市民ら 東京23区は無償化実現済み
物価高で市が値上げ検討
9月下旬の日曜日の夕方、多くの買い物客が行き交う川崎市中原区のモトスミ・ブレーメン通り商店街。「学校給食の無償化を求める川崎市民の会」事務局長の大前博さん(74)は、市教育委員会が市立小中学校の給食費の値上げを検討しているとして、こう訴えた。
「東京都内では23区で給食が無償だ。多摩川を渡った途端、子育て支援に差が生じていいのか」
会は6月から街頭とインターネットで、国に先駆けた取り組みを市に求める署名活動を展開。今月20日時点で約1万3000筆が集まった。市立中学校を卒業した高校生の息子がいる40代のパート女性は「物価上昇で日々の買い物もスーパーのチラシとにらめっこ。子どもは食べ盛りだし、学費や部活でお金がかかる時期」と署名に応じた。
市教委が給食費の値上げを検討する背景には、物価高がある。総務省が18日に公表した9月の全国消費者物価指数(2020年=100、生鮮食品を除く)は108.2。前年同月比は前回衆院選があった21年10月以降、一貫してプラスで推移し、直近は2.4%増だった。企業間で取引されるモノの価格を調べる日銀の企業物価指数も大きく上昇している。
全国で広がる無償化の動き
給食費を巡っては、全国の公立小中学校で無償化の動きが広がっている。文部科学省の調査によると、昨年9月時点で条件付きを含めて4割超の自治体が実施しており、多くが「保護者の経済的負担の軽減」を理由に挙げた。お隣の東京都は今年4月に全23区で実現し、多摩地域でも前向きな検討が続く。
一方、1食当たり小学校で270円、中学校で320円を徴収する川崎市は「現状の給食費で将来にわたって給食の質を維持していくことは困難」として、来春から値上げに踏み切る方針だ。18年度と23年度を比べて、食材調達費用はイカが90円から142.67円、メカジキが123.62円から176.42円、巨峰が60.02円から78.11円にそれぞれ上がった-。そんな資料を示し、理解を求める。
1食当たりの値上げ幅は小学校で50円程度、中学校で60円程度と見込んでおり、小中の9年間の総額は現在の約46万円から55万円近くまで上がることになる。複数の子どもを育てる家庭には負担が重くのしかかり、都内との差が広がることへの不満もくすぶる。
川崎市は財政に余裕のある地方交付税の不交付団体だが、それ故にふるさと納税で税収が流出しても、国から補塡(ほてん)を受けられない。制度のひずみが子育て世帯に影響を及ぼしているとも言える。
子どもの政策は全国一律で
福田紀彦市長は「子どもに関わる話は全国一律で」と主張。「地域間競争ではなく、国としてどうやっていくのかをしっかり議論してもらうことが大事」と述べ、衆院選の論戦に期待を寄せる。市内の選挙区の立候補予定者からも「貧富の差に関係なく給食を無料で提供するのは当然」という訴えが聞かれる。
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