高価なバット、サブスクで気軽に 納得のいく道具との出合いで野球の可能性を広げたい〈野球のミライ〉

酒井翔平 (2024年11月12日付 東京新聞朝刊)
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バットのサブスクリプションサービスを考案した中村勇太さん

野球のミライ

【第5回】家計を直撃する物価高の波は、もともと高額化の傾向にあった野球道具にも及んでいる。野球を楽しむ上でハードルとなる経済的負担を減らそうと、千葉県鎌ケ谷市の野球用品店が始めたバットのサブスクリプション(定額利用)サービスが注目を集めている。

メーカー間の開発競争で価格が上昇

 関東でも最大級の品ぞろえを誇る「超野球専門店CV」。店内には野球道具がところ狭しと並ぶ。通路一面に置かれたバットの中には1本2万円を超える商品も少なくない。軟式用のバットを巡っては、ボールが飛びやすくなる高反発の素材が生み出されると、メーカー間の開発競争が始まり、価格が上昇。人気商品はここ10年で1万円以上値上がりし、5万円を超えるバットもある。

店内に設けられたバットの試打スペース

 同店運営会社社長の中村勇太さん(37)は、かつて接客中にもどかしい体験をした。来店した親子連れが軟式用の高性能バットを品定めしていたが、母親は値段を見て尻込み。「お願い。買って」という子どもの訴えもむなしく、買わずに店を後にした。「バットはその子に合っていた。(使えば)もっと結果を残せると感じた」。同じような光景を目にするたび、心の中のもやもやは大きくなった。

活躍したい選手の気持ちを考えて

 「どうにかしないといけない」。元球児の中村さんには、少しでもうまくなりたい、活躍したいという選手の気持ちが痛いほど理解できた。思案を重ねる中、偶然知った高級バッグのサブスクサービスをヒントにバットのサブスクを手がけることにした。

 サービスは、月額2750円(対象は中古の高性能バット)▽同4950円(3万円未満の新品バット)▽同6600円(3万円以上の新品バット)の3プラン。気になるバットがあればグラウンドで使用感を確かめることができ、合わないと感じたら解約して別のバットを試してもいい。気に入ればそのまま使い、2750円のコース以外は、支払総額が販売額に達した時点で買い取ることもできる。

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店内には訪れたプロ野球選手らのサインがずらり。巨人で活躍するオコエ瑠偉は高校時代からの常連客=いずれも千葉県鎌ケ谷市で

5年で約1700人余りがサービス利用

 2019年の開始以来、小学生の保護者や草野球愛好者を中心に、これまで延べ約1700人余がサービスを利用。現在も常時260人ほどが契約している。一度に高額な支払いをせずにすみ、大きな大会の期間中だけ借りたり、使っていたバットが壊れて急きょ同じバットをレンタルしたりするケースもあるという。

 店内にバットやグラブを試しに使えるスペースを設けるなど、高額だからこそ納得のいく道具を見つけてもらえるよう工夫を凝らす。中村さんは「経済的な負担が野球人口の増加を妨げている側面もあると思う。サブスクが野球の裾野を広げる一助になれば」と力を込めた。

 サブスクサービスはネットからでも申し込める。詳細は「超野球専門店CV バッターズボックス」で見られる。

【野球のミライ】プロ野球は昨季2507万人の観客を動員し、コロナ禍以前の盛り上がりを取り戻した。2028年ロサンゼルス五輪での野球の復帰も決まり、球界には明るい材料が並ぶが、足元では子どもの野球離れが進行し、将来は決して楽観視できない。直面する課題を見つめるとともに、関わる人々の姿を通し、日本野球の未来を探る。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年11月12日

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  • 野球観戦者 says:

    「弘法筆を選ばず」とは言うが、良い仕事をするには良い道具が必要だ。サブスクリプションは一つの方法になる。

    この記事は「野球のミライ」の一環であるが、「少子化」という根本的な危機を直視していないように見える。「野球だけが良ければそれで良い」とはならない問題だ。最後の記事までにこのことを取材して欲しい。

    野球観戦者

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