「戦争の本質は病である」 ポルトガル発の絵本「戦争は、」著者アンドレさん 感染しないために自分の頭で考えて
父親が15年前に書いた詩を基に
虫の姿をした不快な生き物がはい回り、気づかぬうちに人は侵され、独裁者が生まれる。「戦争は、」には象徴的な絵が黒色を基調に描かれ、ページをめくるたびに「戦争は、憎しみ、野心、恨みを糧(かて)とする。」などと、「戦争は、」で始まる鋭い言葉が短く入る。思わず手が止まる絵本だ。
アンドレさんはイラストレーターで編集者、ポルトガルの絵本界を代表する独立系出版社の設立・経営者でもある。父親で詩人、作家、ジャーナリストのジョゼさん(73)が15年前に書いた戦争の詩を基に、14年に絵本作りを企画。世界的に極右勢力が伸張するなど政治と社会の変化に不安を抱き、何かしなければとの思いだったという。
戦争をどう表すか。数々の資料を目にし、詩を自身にしみこませながら結局4年近く、思案した。
「悪行か、くだらなすぎていっそ喜劇か、あらゆる表現ができるのが戦争です。その中で、世界の人々が集団的に記憶している20世紀が重要だと考えました」
爆撃される町を上空からとらえた一枚の写真に、ひらめいた。まるでウイルスが動いているように見えた。ウイルスは顕微鏡でのぞくと機雷の形にも見える。
「病であるという戦争の本質を描こうと考えが固まりました。回り道をしたおかげで答えに達しました」
絵コンテを複数作って選び、ジョゼさんに文章の細部を書き直してもらった。
「文章は絵を説明するものではないし、絵と離れすぎていてもだめ。絵本は絵と文章が融合し、その間の道を読者が自由に歩けるように、想像する余地を残すべきだと思っています」
いかに読者を不快にさせるかを考えた。子どもにもおもねらない。
考えなくなると内面はもろくなる
「目覚まし時計のようなものです。柔らかな音楽では目は覚めない。私たちは安楽と快楽にどっぷりつかろうとしたがるものです」
ウイルスに感染しないよう目を覚ますべきは、自分の頭で考えることをやめてしまった人という。
「SNS(交流サイト)の短い言葉やテレビの映像で私たちは物事を分かった気になり、なるべく考えないように日々トレーニングされています。深い思考をもった生物ではなくなりつつある。でも、考えることをやめると、どんどん私たちの内面はもろくなり、外部からコントロールされやすくなる」
世界で紛争は絶えず、最初は衝撃を受けた映像にもやがて人は慣れさえする。
「この本の恐怖は、読んだ人の意識の層の奥深くに突き刺さる。すると人は考え始めます。裏側に何があり、その事象と自分がどう関わっていくべきなのか」
独裁者を生んだ記憶の「欠落」は、戦争という愚行を繰り返させると考える。「アート作品であると同時に、この本は世界をより良くするためのレジスタンス(抵抗運動)。続けていくしかありません」
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい
難しいね。私はレトリア氏のように頭が良くないからなぜ戦争が起きるのか良く分からない。それが他者への不寛容なのか、貧困や飢えなのか、戦争をゲームと一つと考える為政者のためなのか。
でも自分の目で物を見ることの重要性は理解しているつもりだ。電波の向こう側の世界が事実を示しているとは限らないからね。発信者は自分の都合に合わせて映像を加工してしまう。