障害のある同級生は「普通のクラスの一員」 インクルーシブ教育の先進地、大阪・豊中市の小学校を取材した

同級生と一緒に休み時間を過ごす津田愛土さん(左)=大阪府豊中市の南桜塚小で
授業も休み時間も普通学級で一緒
1月下旬。30人ほどの同級生と一緒に家庭科の授業を受ける6年生の津田愛土(あいと)さん(12)が、点字タイプライターを使って教わった内容のメモを取っていた。
全盲の津田さんは南桜塚小学校の支援学級に在籍しているが、授業も休み時間も普通学級で過ごす。支援学級の先生らに付き添われながら点字の教科書で学び、テストも同級生と同じ内容を点字の紙で受けている。
周囲の同級生は津田さんに対して過度に気を使うことも、変に遠ざけることもしない。家庭科室に移動するときは同級生が当たり前のように腕を貸し、自然にタイプライターの持ち運びを手伝っている子もいた。何人かの同級生に津田さんのことを尋ねたが「普通のクラスの一員ですよ」「学んでいることも一緒だし」。誰もがこう口をそろえる。
同校では普通学級1クラスに、医療的ケア児を含む支援学級の児童が1~3人入って一緒に学ぶ。橋本直樹校長(65)は「重度障害のある子でも、合理的な配慮を保護者と話し合いながら考える。すべての子どもが安心して生活でき、学べる学校を目指している」。
「ともに学び、ともに育つ」教育
津田さんが入学する前にも専門家の助言で点字ブロックを設置するなどした。津田さんは「入学したての頃は机とかにぶつかりそうで怖かったけれど、今は慣れて学校が楽しい。何かあっても頼れる同級生もたくさんいる」と笑顔で話した。
同校で研究も行っている関西学院大の濱元(はまもと)伸彦准教授(インクルーシブ教育)によると、豊中市では1960年代に教員らが人権教育に熱心に取り組んだ歴史があり、それを背景に「ともに学び、ともに育つ」教育が推進されてきた。濱元准教授は「障害のある子どもを『当然一緒にいるべき仲間』と捉える集団づくりを低年齢時から切れ目なく行っているのは先進的だ」と話す。
一方で、特別支援学校の在学者数は過去最多
障害のある子どもを「分けない」教育が豊中市で成果を上げている半面、障害のある子どもが他の子どもから離れて学ぶ特別支援学校の就学者は増えている。文部科学省によると、全国の特別支援学校の在学者数は昨年5月時点で15万5000人と過去最多に。学校の存在などが広く認知されてきたことなどが理由という。
ただ、特別支援学校への就学が一般化する中で、地域の学校への就学に「困難を感じる」という声もある。肢体不自由の子どもを地域の中学校に通わせる愛知県内のある保護者は「医療的ケア児であれば支援法でさまざまな援助が受けられるが、そうでないうちのような子どもは支援が受けづらい。地域の学校に通うハードルは高い」。バリアフリー化の要望などは、議員の力を借りて何とか実現しているという。
濱元准教授は、障害者権利条約(日本は2014年批准)に「インクルーシブ教育を受ける権利」が盛り込まれていると指摘。「地域の学校で教育を受けられる機会を保障することが大切だ」と訴えている。
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