【選択的夫婦別姓】親子で別姓「かわいそう」は偏見? 親が別姓の当事者から「議論すり替えないで」の声

「自他ともに認める仲の良い家族」と女性。実家には、数年前の家族での食事会の写真が飾られている
別姓でも誰が何と言おうと仲良し家族
「『(学校からの帰宅時に家族が自宅にいない)かぎっ子でかわいそう』と言われた時と同じ。私は父も母も誇らしく大好きなのに、大きなお世話だ」。事実婚の両親のもとで育った横浜市の理学療法士の女性(45)は話す。
母(77)も同じ理学療法士。「実家の姓を残したい」「旧姓で資格を取得して仕事をしてきた」という母の思いを尊重した父(77)も、事実婚に賛成した。家族4人の中で父だけは姓が違うが、今でも家族みんなでよく旅行や食事に出かけるなど、自他ともに認める仲の良い親子だ。
女性も自分の姓に愛着を感じて事実婚を選んだ。数年前に挙式だけして、結婚届は出していない。「反対派が言う『一体感』は、誰かが犠牲になった上での一体感では」「旧姓をニックネーム(通称)として法制化しても、ほぼ女性が戸籍姓を変える現状は変わらないだろう」と考えている。
ただ、事実婚のままでは今後、相続や入院時に困る可能性が高いため、女性の母も別姓でも法律婚できる制度の導入を望んでいる。
国際結婚やステップファミリーも別姓
夫婦同姓が義務化されている今も、事実婚や国際結婚、親の離婚・再婚、母方の旧姓を引き継ぐための養子縁組などで親子別姓となっているケースはある。
「生活の中で意識することはほとんどなく、困ることもない」。東京都内に住む黒川ひかりさん(14)=仮名=の両親は、互いに生まれながらの姓で生きたいと事実婚を選んだ。家の表札には二つの姓が並ぶ。周りも国際結婚やステップファミリーなど親子での別姓はさほど珍しくなく、小さいころから当然と受け止めていた。周りには「かわいそう」と言う人も、別姓を理由にいじめる人もいない。
両親は、夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定は憲法違反だとして、選択的夫婦別姓制度を国に求める訴えを東京地裁に起こした。ひかりさんは「自分が将来どうするかは分からないが、選択肢はほしい」と、両親の活動を見守る。
女性の権利を制限したい人が論点すり替え
東京弁護士会副会長の福崎聖子さんは「子どもを引き合いに『かわいそう』と言うのは、女性の権利を制限したい人たちが論点をすり替える時の昔からのやり方」と怒る。
現行制度でも、親の離婚、再婚で子どもの姓が変わるなど問題が生じており、福崎さんは自身が親の離婚を発端に15歳の時に姓が変わった経験を踏まえ、「むしろ、もともと親子別姓なら子どもは親に振り回されず、親が離婚したことを学校で知られることもない」と話す。
現在も両親の離婚などで一方の親と姓が違う場合、家庭裁判所の許可を得て子ども自身がどちらかの姓に変更することが可能で、「選択的夫婦別姓が導入された場合も、同様の運用がされるだろう」と指摘した。
選択的夫婦別姓における子どもの姓
1996年に法務省によって公表された選択的夫婦別姓の導入を盛り込んだ民法改正案要綱は、別姓を選ぶ夫婦は婚姻時に子どもの姓を定めるとした。2022年に野党5党が国会に提出した民法改正案は、別姓夫婦は、出生時に父母の協議によって子どもの姓を決めるとしている。
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